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挑戦と感謝の気持ちを忘れない
―多くの出会いが、自分の限界を広げて、志を磨いてくれる―

インキュベイトファンド 和田圭祐
和田圭祐(わだ  けいすけ)
インキュベイトファンド 代表パートナー

1981年生まれ。京都大学卒業後、2004 年株式会社フューチャーベンチャーキャピタル入社。ベンチャー投資、M&A アドバイザリー業務、二人組合の組成管理業務に従事する。2006 年株式会社サイバーエージェント入社。グループ初の海外投資ファンドとなるCA JAIC CHINA Internet Fundの組成管理業務に従事し、国内インターネット関連企業の投資育成業務を行う。2007 年セレネベンチャーパートナーズ設立、代表パートナー就任。ポケラボの設立等を含めたスタートアップのインキュベーション活動に従事する。2010 年インキュベイトファンド設立、代表パートナーに就任。Incubate Campなどのシード投資プログラム業務を主幹。

学生団体で出会った人々が人生に与えてくれたもの

和田圭祐代表パートナー語る

―まずは、学生時代のお話からうかがっていきたいと思います。和田さんはどんな学生生活を送っていましたか?

  大学時代はアイセック(NPO法人アイセック・ジャパン)という団体に所属していました。アイセックは海外のインターンシップを運営している学生団体で、京都大学に限らずいろいろな大学が参加している横断的なネットワークです。自分の常識の枠からはみ出た個性豊かな先輩が多く、一緒にいるのが刺激的だったので、あまり深く考えずに気づいたら所属していました。実際は、アイセックの活動内容とは全然違うのですが、仲間と着物をつくって売ったりとか……今考えると、よくわからないことをやっていました(笑)。

―アイセックの活動からは、どんなことを得ましたか?

  アイセックに限らずですが、大学時代を通していろんな出会いのなかで、人と違った考え方ができて、自分なりの哲学や志が明確な人はすごく魅力的だな、と感じました。そのなかでも起業家の方たちには特に野心的な挑戦をしている人が多かったので、「将来は起業家と一緒に仕事をしたい」と思えたことが、自分にとって大事な原点のひとつになっていて、ベンチャーキャピタル(VC)を選択したことにも直結していますね。ゼロから自分のアイデアを世の中で形にしていくチャレンジのおもしろさを感じました。

新卒でVCへ。ハングリー精神で仕事に向き合った日々

和田圭祐さんの新卒時代について

―大学での経験を経て、新卒でフューチャーベンチャーキャピタルにご入社されていますよね。大学卒業後すぐにVCを選択する人は感覚的にはそんなに多くはないのでは……と思うのですが。

  そうですね。たしかに当時は、ベンチャーキャピタリストという職業も今以上に一般に浸透していなかったかもしれません。僕は国際金融関連のゼミに所属していたので、金融分野には興味がありましたけど、ベンチャーキャピタリストに関しては、大学3年生の時に先輩から薦められた本を読んで知りました。そこから(すでにVCの活動が盛んだった)アメリカの事例を調べていくうちに、ベンチャーキャピタリストへの興味が高まっていったんです。

  ベンチャーキャピタリストになろうと思った時、周りの大人からは、一度、事業会社や金融機関を経験してからのほうがいいという反対意見もありました。でも、僕としては可能ならば遠回りせずに新卒で早く挑戦したいなと。幅広いスキルや経験が必要とされる職業であることはわかっていたので、どうせなら独立系の小さなVCのほうがいいだろうと考え、フューチャーベンチャーキャピタルの新卒採用を見つけて、面接を受けて入ったという流れです。

―その時フューチャーベンチャーキャピタルに新卒入社されたのは、和田さんおひとりだったそうですね。大変なことも多かったのではないでしょうか?

  基本的にはどんな仕事も貪欲に引き受けるつもりで、先輩たちがちょっと敬遠するような仕事であっても積極的に拾いに行っていたと思います。ひとりしかいない新人ということで、会社のみなさんから注目や愛情を注がれたと感じることも多く、とてもよかった面もあります。また、社内研修やテレアポの件数目標などは、1年上の先輩たちと一括りにされるおかげで鍛えられたし、勉強になることもたくさんありました。ただ、社会人の同期と呼べる友人がいない、というのは人生損している気もします。

  これは同期がいる、いないは関係なくあらゆる新卒VCが直面すると思うのですが、新卒だろうと、真剣勝負している経営者をどう支援できるのか、というところで価値が決まるので、もっと進化しなきゃいけないという自分自身へのプレッシャーはありました。

―具体的に、新卒でVCに入った場合、どのような業務を担当するんでしょうか?

  大手のVCでは、スタートアップの経営者との新規の関係づくりから始め、担当投資先の増加に伴い、取締役会への出席など支援業務が増えていくことが多いようですが、僕の場合は、それら以外にも、ファンドレイズ(出資の募集)のサポート業務や特化型ファンドの組成、ほかには、会社の収益を直接稼ぐためのコンサルティングやM&Aアドバイザリー業務など、複数の業務にまたがって幅広く仕事をさせてもらいました。

もっと経験値を積むために、サイバーエージェントへの転職を決意

サイバーへの転職について

―その後、サイバーエージェントの投資部門に転職をされます。転職を決めるまでにはどのような経緯が?

  先ほど、新卒ならVCに入る前に事業会社を経験したほうがいいという意見があった話をしましたけど、VCで働いていくうちに、やはり事業や経営の経験不足を感じるようになり、特定の分野を深く追求したいと考えるようになったんです。フューチャーベンチャーキャピタルでは幅広く多様な業種に投資をしていたんですが、何か自分の得意な領域をつくり、支援先の事業により深く関わって経験を積める機会がほしいと思っていました。

  そう考えた時、個人的にインターネットサービスが好きだったこともありましたし、インターネット産業はまだまだ歴史が始まったばかりで成長率も高く、ベンチャーが牽引する産業であると感じました。当時は京都にいましたが、ITベンチャーの中心地でチャレンジしなければと思い、VC事業を強化していたサイバーエージェントに興味を持ったんです。

―サイバーエージェントとフューチャーベンチャーキャピタルは、雰囲気も全く違うのかなと想像するのですが、どんな点で一番違いを感じましたか?

  現在のサイバーエージェント・ベンチャーズ(当時は株式会社シーエー・キャピタル)にいたのですが、非常に若くて組織全体に元気があり成長意欲にあふれていて、すごく魅力的な組織でしたね。一番大きな点は、若い人に権限が託されていて、本当に大胆なチャレンジができているということでしょうか。当時24歳だった僕も機会に恵まれて、中国向けのファンドの立上げプロジェクトを経験させてもらいました。

  国内の投資業務でも、今、WiL(ウィル)の代表を務めている西條さん(西條晋一[さいじょう しんいち]氏/株式会社WiL共同創業者)やグリーベンチャーズの堤さん(堤達生[つつみ たつお]氏/現・グリーベンチャーズ株式会社パートナー)、サイバーエージェント・ベンチャーズの田島さん(田島総一[たじま そういち]氏/株式会社サイバーエージェント代表取締役社長)たちと一緒に投資先の経営の現場に携わる業務を経験させてもらいながら、「年齢に関係なく挑戦することが大事で、挑戦した分だけ経験が積めて活躍できるんだ」と驚いたのを覚えています。

理想の投資スタイルを追求するためのVCを立ち上げ

和田圭祐氏と笠井レオ氏(写真左:和田圭祐氏 写真右: 笠井レオ[かさいれお]氏/インキュベイトファンド アソシエイト)

―そこからご自身でセレネベンチャーパートナーズを設立されます。起業のきっかけを教えていただけますか?

  サイバーエージェントでも、ベンチャーキャピタリストたるもの事業経験が必要だという強い価値観があり、その影響を受けつつ、自分なりのベンチャーキャピタリストの理想像を考えていました。自分自身で事業をやるべきかとも考えたんですが、理想のVCを目指すプロセスとしての起業というのは、考え方として間違っていそうなので悩んでいました。そんな時、赤浦さん(赤浦徹[あかうら とおる]氏/インキュベイトファンド代表パートナー)と知り合いました。彼の投資のスタイルは、自分の理想のベンチャーキャピタリストに近く、立派な成果も出していて、ロールモデルのひとりと出会えたことが、一番大きなきっかけだったと思います。

―和田さんが理想とする投資スタイルというのは?

  会社創業前後のまだ実績もない、場合によってはプロダクトもないようなステージへもリスクをとってサポートしていくスタイルですね。今でこそシード投資は充実しつつありますが、当時はそんなプレーヤーはすごく少なかったんです。独立した個人としてファンド運営していた赤浦さんはシード・アーリーステージ(会社の設立準備期・初期)でも、起業家のパートナーとして寄り添って、積極的にコミットしていて、自分にとっての理想形に近いと思いました。

―赤浦さんらと設立したインキュベイトファンドは、まさにそのシード期に特化した投資を行っていますよね。それはなぜですか?

  先ほども「今でこそ増えてきている」と言いましたが、数年前までは日本のマーケット全体を見てもシードステージに積極投資するVCが少なかったんです。なので、僕たちがそこでしっかりと成果を出すことで、エコシステムの一部を確立したい、と本気で思い続けてきました。僕を含めてインキュベイトファンドのメンバーが、ゼロからイチをつくるフェーズに深くコミットするのが好きだというのも、シード期に特化している理由のひとつですね。

  そもそも、インキュベイトファンドを立ち上げた原点は、シード・アーリーステージへの投資哲学や情熱をお互いに共有できていたからで、そこが共通しているのであれば、一緒にパートナーシップを組んだほうが、より大きな成果を生み出せるのではないかと4人で考えたからなんです。

―インキュベイトファンドで開催している起業家支援プログラム「Incubate Camp」の内容について教えてください。

  起業家が考えたビジネスプランをベンチャーキャピタリストとともにブラッシュアップしていく合宿形式のプログラムで、資金調達につながることを目的としています。僕らだけでなく、よく協調投資でご一緒させていただくベンチャーキャピタリストの方々にもご協力いただいて、選考を通過した15名前後の有望な起業家の方に参加していただくイベントです。イベントは1泊2日のプログラムで構成されているのですが、その前後2ヶ月ほどの時間をかけてビジネスプランを磨き上げていきます。

―これまで7回実施されて、応募される方々の傾向に変化はありますか?

  参加する起業家の方たちのレベルはどんどん上がってきています。それに伴って、運営している僕ら側にも変化があり、投資金額ひとつとっても、当初は、300万円という少額投資からスタートしたのですが、直近では数千万円から億単位の投資が決まる事例もできつつあるんです。これは、起業家のみなさんのレベルアップと、ゲストベンチャーキャピタリストさんのご協力の両方があって、進化できているのだと思っています。これまで運営を担ってくれた木下さん(木下慶彦[きのした よしひこ]氏/Skyland Ventures代表パートナー)や佐々木さん(佐々木浩史[ささき ひろし]氏/プライマルキャピタル代表パートナー)の見えない努力もあります。

周りの応援と努力があってこその職業。感謝を忘れない

インキュベイトファンド和田圭祐さん

―和田さんが今後注目したい領域について教えてください。

  今後、僕らは起業家のみなさんにより大きな挑戦をしてもらえるように、昨年末に組成した新ファンドから、シード・アーリー期の段階でも億単位で資金提供をしていきます。従来インターネットがほとんど活用されていなかったような事業領域にもインターネットがどんどん浸透していくので、大きな進化が起こりそうな既存産業であったり、未来の社会に必要とされる大きな課題にチャレンジしたいです。

  最近は、IoT(モノのインターネット)や人工知能などには興味があって、起業家や専門家のみなさんから技術的なことなども日々学んでいます。

―ベンチャーキャピタリストとして働くうえで、どんなことを大切にされていますか?

  僕らが今、チャレンジできているのは、ファンドに出資してくださっている出資者の方々に始まり、実際に僕らの投資を受けて事業の成長に本気で挑戦している起業家の方々がいて、その挑戦に共感して働く従業員の方々の努力があってこそなんですよね。一緒にやっているインキュベイトファンドのメンバーもちろん大事な仲間ですし、そういった周囲の応援や努力があって初めて成立する仕事だということを胆に銘じて、感謝の念を絶対に忘れてはいけないと思っています。

  それと、この職業に就いているからには、出資者にリターンで恩返しすることは必要最低条件ですが、それだけにとどまらず、社会から本当に必要とされ、インフラと認識されるレベルの大きな事業を生み出すのを手伝いたいんですよね。圧倒的なホームランが生まれるために、自分は何をしたらいいのかを考え抜いて、常に全力でやっていきたいと思います。

―最後になりますが、就職活動中の学生や仕事に対して悩みを持つ人たちにメッセージをお願いします。

  僕は今の仕事をしている自分はすごく恵まれているなと思っていて、それは自分がやりたいこと、チャレンジしたいことを明らかにできているからです。もちろん自分の力だけではなくて、先ほども言った通り、周囲の人々の縁や運のおかげなので感謝していますが、まずは本気でやり抜きたい挑戦に取り組める仕事を探すことが大事かなと思っています。僕は大学時代にベンチャーキャピタルという仕事を見つけられたので、すごくよかったなと思います。

  ただ、そう簡単には見つからないという人もいますよね。探す努力も必要だと思うので、「自分はどういう瞬間に燃えているのか」「どんなことを成し遂げたいのか」。そういうことを深く掘り下げて考えてみるのもいいと思います。明日死ぬかもしれないし10年後に死ぬかもしれないわけで……もしそうなった時に何をやれていたら自分は後悔しないのか。今見つからないからといって考えるのを止めずに、考え続けるべきだと思います。

  考える材料のひとつとして、たくさんの人に会ってみるのもいいと思いますよ。僕が幸いだったのは、大学時代に既存のレールからはみ出ているユニークというかクレイジーな方といっぱい出会えたことです。常識にとらわれずに自分のやりたいことを貫く姿勢はすごく魅力的でした。変わった人を遠ざけずに興味を持って接していくと、自分の思考の限界を広げてくれます。「これくらいはっちゃけてても生きて行けるんだ」って思えてきて、レールからはみ出ること、自分でレールを敷くことが怖くなくなります(笑)。人との出会いで大きく変わることもありますからね。振り返ってみると僕自身も転機には誰かの影響があります。というわけで、たくさん出会ってください。

[取材・執筆]渡辺千恵 [写真撮影]真田明日美

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