未経験から昇格した店長に学ぶ、来店客目線の「靴下屋」販売術

[代表取締役]串田 明(くしだ・あきら)
[創業]1978年4月 ※前身となる「串田履物店」は1917年に創業
[所在地]東京都渋谷区初台1-51-1 初台センタービル8階
[アクセス]京王線/京王新線 初台駅から徒歩1分
『靴下屋』フランチャイズ店の運営を手がける、販売のプロ集団。シューズと靴下に関する最先端の情報を提案型の販売に活かしている。グループ企業にシューズブランド『ORiental Traffic』などの販売代行を担う有限会社スリーナインを抱え、“足元から暮らしを豊かに” のコンセプト実現に向けた取り組みが老若男女を問わず、幅広い年齢層からの支持を集めている。2019年1月現在、ククが管轄している『靴下屋』は東京・神奈川・埼玉・山梨を中心に12店を展開。
靴下屋 セレオ八王子店(取材場所)
[所在地]東京都八王子市旭町1-1 セレオ八王子北館4階
[アクセス]JR各線 八王子駅直結
※内容はすべて取材当時のものとなります。
「系列12店のなかで売上No.1の店長がいる」と聞きつけ、Career Groove編集部が今回お邪魔したのは、レッグウェア専門店の『靴下屋』。なかでも独自の販売ノウハウを活かしながらアパレルブランドのフランチャイズ事業を展開する、株式会社ククの運営店を2018年の秋口に訪れました。
「売上No.1を実現するんだから、さぞかしパワフルな方なんだろうなぁ」という筆者の勝手な店長像に対して、目の前に現れたのは非常に謙虚で奥ゆかしい西澤真衣さん。この女性がどうやって偉業を達成したのか販売の “極意” を聞いてみると、ご自身の経験にもとづいた商品の提案術を明かしてくださいました。
これから繰り広げられるのは、“等身大” の自分で無理なく売り場に立ち、売上アップを目指す方法。西澤店長から学ぶメソッドをもとに、『靴下屋』でアパレル店員として必要不可欠な基本動作を身につけてみませんか?
手づくりディスプレイで商品知識を身につける『靴下屋』バイト

2012年6月、靴下屋 三鷹コラル店にアルバイトとして入社。提案型の接客販売は未経験ながら着々と成長し、同店にて副店長・店長を務める。2015年10月、これまでの実力が認められ正社員へ昇格。その後も店長として西武新宿ペペ店・セレオ国分寺店を束ね、2017年9月よりセレオ八王子店に勤務している。
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――インタビューに応じてくださって本当にありがとうございます! まずは自己紹介をお願いできますか?
こちらこそ、どうぞよろしくお願いいたします。
セレオ八王子店の店長として接客やレジ対応、売上在庫管理や商品発注、売り場づくり、バイトスタッフを集めての店舗ミーティングをメインに行っています。店の外ですと、会社や館(やかた)の会議に参加することもありますね。
――『靴下屋』でバイトを始めたら、どのような仕事を任されるのでしょうか?
最初のうちは、
■店頭での声出し(「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」といった挨拶)
■靴下の “おたたみ” をはじめとする商品整理
■店内の清掃
などを、必要に応じてOJT方式でレクチャーしながら進めていきます。
こうした基本動作に慣れたら、晴れて接客デビューです。来店されるお客様へお声がけを積極的に行い、戦力としてご活躍いただきます。でも “できることからていねいに” 行っていただけたら……と考えていますので、焦らずゆっくり成長する姿を見せてもらえたら。
――基本動作と接客に親しんできたら、次にどんなことを任せますか?
発注作業や商品のディスプレイを変える作業があるので、意欲に応じてお任せしています。
――ディスプレイは店のメンバーで話し合って決めるんでしょうか? それとも店長である西澤さんの “色” が濃く出るんでしょうか?
親会社のTabio下にある『靴下屋』と、販売を託されているクク管轄下の12店(セレオ八王子店は後者)では考え方が異なるようですが……うちでは担当制にしています。
・レディース
・メンズ
・レッグラボ(素材にこだわった商品シリーズ)
・スポーツ
といった商品の “部門” ごとに、ディスプレイの担当が割り振られています。メインの「レディース」はいつも目立つところにレイアウトするので店長が責任を持って行い、そのほかを各スタッフにお願いする形を取っていますね。
――割り振られた部門のディスプレイを自分で考えてつくるんでしょうか?
そうですね。事前に「今回はどうやってディスプレイするか」という基本的な方針を説明して、そのあとは各自の裁量でつくってもらっています。

――新人のアルバイトさんがディスプレイづくりデビューを果たす時は、どのような点に気をつけながら指導されますか?
新人スタッフは売れ筋の商品がわからないと思うので、前年データの見方と一緒に「去年の○月はこのアイテムがよく出ていたから、今年もこの類似商品が推せそうだね」という “傾向” をお伝えします。
そのあとは、どの位置に何をレイアウトすると目に留まって売れやすいかを共有して。「ディスプレイは白黒以外の色が入っている方がアイキャッチになるよ」といったヒントも与える。そちらに添ってつくってもらい、売り場に立ちながら効果検証する……の繰り返しですね。
――たとえば素材へのこだわりを謳う「レッグラボ」シリーズの担当者は、どんなディスプレイにするといいんでしょう?
実際に触ってみることで素材のこだわりをお客様が “体験” できるようなディスプレイづくりが必要ですよね。あとは素材に関する説明を、POPとして設ける方法で進めてもらえたら。
ただ、大切なのは商品の魅力を “接客” できちんと伝えることです。ディスプレイは接客を手助けしてくれるツール。バイトスタッフが自分たちで手づくりすることで商品知識が自然と頭のなかに入り、接客に活かせるのではないかと踏んでいます。
――狙いがあるんですね。それでは次に『靴下屋』式の接客について教えてください!
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売上No.1店長を育んだ、『靴下屋』の接客ロールプレイング大会

――商品提案に活かせる専門知識やトレンドはどうやってつかんでいくのでしょう?
ククや館(やかた)が主催する会議への参加や、親会社のTabioからレクチャーを受けることで身につけています。店舗ごとにinstagramのアカウントがあるので、発信がてらトレンドを発見することも。
私の場合、プライベートでもアパレルショップを覗いて「今どんなアイテムが売れてるのかな」とチェックするようになりました。自分の目で見てとらえたものを、接客やディスプレイづくりに引っ張ってきているイメージですね。
――さすが、クク管轄下の12店舗で「売上No.1」とお聞きしているだけあって熱心ですね! 西澤さんが売上を伸ばすために心がけている信条はありますか?
売上No.1は私が……というより、セレオ八王子店がオープンした時の店長による功績です。最初に店づくりの基礎をしっかり行ってくださったことが売上アップにつながっていて。私は異動してきて、そちらを引き継いだだけなので。
――謙虚だなぁ。でも前任者が整えた店のスタイルを崩すことなく保っているのは、紛れもなく西澤さんですよね。心当たること、あるんじゃないですか?
(少し考えてから言葉を選ぶように)そうですね……「お客様に合った提案ができているだろうか?」という点は、ふだんから意識的に取り組んでいるかもしれません。万人受けする売れ筋の定番商品だけでなく、トレンドのアイテムを自店の客層が受け入れやすい形で提案するにはどうしたらよいか、といったことを常に考えています。
たとえばご年配の女性に「ステキです」とトレンドアイテムを無理矢理あてがっても響かないので、お手持ちのボトムスを聞いて「それならこんな風に合わせられますよ」という感じで提案したり。
――それは心強い! 私は靴下だけでなく、レギンス、タイツ、トレンカ……最近レッグウェアが豊富すぎて何をどれに合わせたらよいか完全に迷子になっていて……もう秋口なのにサンダル&素足です(泣)。
健康的ですね(笑)。
ありがたいことに、トレンドを押さえたスタッフによる提案が、安心してご購入いただく材料になってはいるようです。
――接客力が売上につながっている好例ですね。ほかにもエピソードをお持ちですか?
ご年配のお客様は「締めつけがキツいとつらいの……」と履き口がゆるめの商品をお探しになるケースが多いんです。そこでゴムを触っている方には「やわらかいので履きやすいですよ」と最初にお伝えして、興味を持っていただければ「他にもこんなアイテムをご用意しています」「よろしければご検討ください」とつなげていきます。
――なるほど。お客さんを観察することから始めるんですね?
そうですね。どのような商品を触っているかで、お声がけの言葉を選んでいます。
その時々で打ち出している商品を気にされるお客様には、「今これすごく人気なんですよ」と靴下界のトレンドをお知らせします。反応があったら「こういう履き方をするとかわいくて」「こんな使い方もできます」と提案の幅を広げて、もっと興味を持ってもらえるように働きかけるんです。

――お客さんの反応を見ながらナチュラルに。押しつけがましくないんですね! 思わず耳を傾けちゃう。
(恐縮しながら)ありがとうございます。
――そうした力は接客のロールプレイング大会への出場で培われるんでしょうか? 西澤さんは受賞経験があるとお聞きしています。どんなコンテストなんですか?
自分で選んだ靴下を会場に持ち込むんです。本数制限があるのであまり持っていけないんですけど、そちらをもとに1:1で接客して、ご購入にいたるまでの姿を審査員の方にチェックしていただきます。
――お客さん役はどんな方が担当されるんですか?
私が出場した時は、自店と似たような客層の方が担当してくださいました。
――それはチャンスでしたね! 西澤さんはその時、どんな接客をしたんでしょう?
持ち込んだ靴下のひとつを提案するんですけど、初めてお会いしたお客様のニーズを拾うのが大変でした。質問や会話を重ねて好みをお聞きして、目の前のお客様が履く場面まで想像しながら接客しないといけなくて。こちらがどれだけオススメしても、そのお客様が欲しくならなければ意味がありません。なので、なぜこのアイテムがお客様に合うか……という理由を、コーディネートと一緒に提案するようにしました。
その時は「お祝いの席に履いていく」というお話を引き出したので、花柄があしらわれた靴下をお見せしながら「花束を連想させることで寿ぎの気持ちを演出できるかもしれませんね」と提案しました。
――お客様の気持ちや事情を懸命に推し量った西澤さんの提案が “刺さって” 評価につながったんでしょうね!
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『靴下屋』では未経験から販売のプロを目指せる

――『靴下屋』で働いてみて、ご自身が「成長できた」と感じられたポイントを教えていただけますか?
もともとは接客が得意なわけではなかったんです。先輩方のOJTや研修を受けるうちに、自然とスキルアップできました。
――ご入社前にも接客のご経験が?
地元でスーパーのレジ打ちをしていました。持ち込まれる商品を早く・正確に処理することを求められ、できた時は達成感がありましたが、続けるうちにもう少しだけ “やりがい” が欲しくなって。
――それで提案型の接客が生じる『靴下屋』の門を叩いたんですね。ギャップはありました?
スーパーではレジでお客様と接する機会はあっても、1:1で商品を説明しながら販売する経験はありませんでした。初めてのことだらけで、最初のころはガッチガチでまったく話せなくて。
――でも今や、系列12店のなかで “売上No.1” の店長さんですからね。お客さんに提案を受け入れていただけるようになったターニングポイントは?
やっぱりロールプレイング大会ですね。初めて参加したのは、まだ接客を苦手としていたころでした。誘われても乗り気ではなかったんですけど、「苦手だからこそ取り組んでみよう」と考えるようになって。
練習会に出席しながら、お客様の求めていることや売上につながる提案方法を少しずつ掴んでいきました。店に帰ってから売り場で実践してみて、ご購入にいたるケースが増えていって。そこで少しずつ自信が芽生えていきましたね。

――そうだったんですね。では販売の現場で感じたやりがいや楽しさについて教えてください。印象に残っているお客さんとのエピソードはありますか?
新宿店に在籍していた時、わたしが考えたディスプレイをじっと眺めているお客様がいらっしゃって。話しかけたら応じてくださり、提案した商品をご購入いただくことができました。
後日またご来店いただいた際も、同じものをお友達用に買ってくださって。本当にうれしかったです!
――よかったですね! 何のディスプレイで、どのような提案をなさったんですか?
レースがあしらわれた靴下を、かわいらしいガーリーな雰囲気が伝わるようにディスプレイしました。接客では「複数の素材を使っているので単調にならない」「シンプルな1色使いだからお洋服に合わせやすい」「いま履いていらっしゃるパンプスにぴったり」とお声がけして、お客様のライフスタイルにそのアイテムが自然と組み込まれるような提案を心がけました。
――そのお客さんは、西澤さんが薦めたアイテムのどんな点を気に入ってくださったと感じていますか?
商品ターゲットである20代前半の女性だったと思いますが、合わせたお姿を鏡に映して「使いやすそう」と思っていただけたのかな……と。
――なるほど! この商品を持っていたらどんなコーディネートが可能になるか、イメージをうまく抱かせることができたんですね。
お友達にも、ご自身の言葉でわかりやすく伝えてくださったんだと思います。
――また謙虚が炸裂しましたね(笑)!
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未経験でも “こだわり” 届ける気持ちがあれば『靴下屋』では採用
――系列の『靴下屋』は、一店舗あたりどのくらいの人数で営業していますか?
セレオ八王子店の場合、基本的に3人で営業しています。シフトは
■早番(9:30~18:30)
■中番(11:00~20:00)
■遅番(12:30/13:00~21:15)
の3種類があって、営業時間中は必ず2人スタッフがいるような体制を取っていますね。
※勤務時間・シフトの種類は店舗によって異なるので、応募時に要確認。他店は2人体制が多いという。
――『靴下屋』に入社するスタッフが初めて入る可能性があるシフトは、早番・中番・遅番のどちらですか?
フルで入っていただけると非常に助かるので、「どれも」と申し上げたいところです。
ただ扶養に入っていて働ける時間に制限のある方や、お子さまがいらっしゃって「早番だけ」という方を門前払いするようなことはなく、一緒に働いてもらっています。
――どのようなスタッフと一緒に働きたいですか?
『靴下屋』のこだわりを、一緒に届けてくれる方と働きたいですね。
商品知識や売上につながる提案方法も新人の方にはお伝えしますが、それを聞き流すのではなく積極的に吸収して、自分から “発信” してくれるような人だとうれしいです!
――自分から “発信” するとは?
お客様からご要望を承る前に「この商品はすごく肌触りがいいんですよ」とお声がけして、積極的に接点を持つよう心がけることですね。販売の経験はなくても “発信しよう” という気持ちが強い人は大歓迎です!
――面接では応募者のどのような点に注目していらっしゃいますか?
接客販売の経験がない方は、しっかり元気に受け答えをされているかどうか。何より “人と接するのが好き” かどうかを拝見しています。
――“人と接するのが好き” というのは、どのような点で判断するんですか?
わかりやすいのは、会話中に目を合わせてくれるか、笑顔があるかどうか……ですよね。でもそれだけではなくて、履歴書に書かれていることをフックに会話を掘り下げることで見えることもあります。
アルバイト経験があるなら「その仕事を通じて得た強みは何ですか?」と聞いてみて、どんな言葉が返ってくるか……ですね。何を大切に感じながらこれまでバイトしてきたかがわかるので、参考になります。

――先ほど「戦力になるために研修が役立った」とおっしゃっていましたが、どのような内容ですか?
入社3~4ヵ月経ったころに受ける2日間の「スタッフ研修」で、販売の基本事項を学びます。親会社のTabioが主催している研修で、まず経営理念をお聞きしました。
あとは接客について、「何を感じながらお客様に接するべきか」といった心がけから、靴下の畳み方、商品部位の名称、素材まで実務に役立つ知識を身につけていきます。その後は1年くらい経ってスタッフランクが上がったころに行く研修もありますね。
このほか、セレオ八王子店では “館(やかた)の研修” として売場づくり、スタッフ育成、マネジメント、トレンド、色彩の研修が用意されています。「仕事に慣れてきたから新しい知識をつけたい」という動機のスタッフもいれば、店長が「このスタッフに行ってほしい」と考えて打診するケースもあります。
――なるほど。それと、クク管轄下の『靴下屋』では、正社員登用の実績ってどのくらいあるんでしょうか?
正確な数字は分かりませんが、やってみたい気持ちがあれば検討してもらえる環境です。わたしも「やってみたい」と手を挙げたところ、昇格することができたので!
――キャリアアップできる環境が整っているんですね。最後に西澤店長のお立場から、『靴下屋』へのバイト応募を考えている方の背中を押すようなメッセージをお願いします!
私は最初のうちは苦手意識のあった提案型の接客も、先輩や仲間のフォローや豊富な研修プログラムに助けられて、楽しさを感じられるようになりました。未経験から始めても成長できる環境が広がっているので、ファッションに興味があったらぜひ一緒に働きましょう!
――ありがとうございました!
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取材・文・撮影 / 岡山朋代