14万を一日3台! ヘルスケア “帝王” が語る、実演販売サバイブ術
[代表取締役]酒井 貴康(さかい・たかやす)
[創業]1991年4月
[本社所在地]東京都港区南青山5-12-6 英ビル3階
[アクセス]各線 表参道駅から徒歩10分
化粧品、生活雑貨、パソコン・モバイル通信、家電、健康雑貨といったあらゆる商品の実演型販促プロモーションを全国規模で展開。小売店の店頭をはじめ、展示会・見本市などで行われるイベントに出向き、購買意欲を意識した集客および実演販売を手がけている。テレビショッピング番組、商品動画への出演も。これまで同社に依頼のあったメーカーや企業数は500社超。取り扱ったアイテムは3,000品目にのぼる。
※内容はすべて取材当時のものとなります。
週末の家電量販店やデパートで、ひときわ人口密度の高いエリアが生まれている光景を見たことありませんか?
人だかりの中心にいるのは「実演販売士」と呼ばれる “販促” のプロ。
軽妙洒脱なトークで通りがかりの人々を魅了し、購買意欲を刺激してはみるみるうちに商品を売っていきます。
一日10台しか売れなかったタブレットPCも、販売士の手にかかると一日100台出ることもあるそう。
彼らが属するのは、取り扱う商品を “どれだけ売ったか” で自分の稼ぎや評価が決まる世界。
活躍できるかは “腕” 次第という、厳しくもやりがいのある華やかな現場で日々努力をし続けています。
今回Career Groove編集部は、そんな実演販売の現場に飛び込んだ一人の男性にフォーカス。
実演販売士を多く抱える「バーンアップコーポレーション」から独立し、歴たった1年半でヘルスケア用品の “帝王”、“青汁王子” の名をほしいままにした「ぎしろっく。」こと、山岸泰史さんに仕事の楽しさやエピソードをお話しいただきました。
営業や販売のプロを目指したいそこのあなた!
取材中にもかかわらず、ナチュラルに始まるセールストークに注目です!!!
実物ないのに欲しい! ヒアリングと観察で客の心をつかむ実演販売術
★実演販売士が所属する「バーンアップコーポレーション」のバイトはこちら★――実演販売士さんのお話を楽しみにしてきました。どうぞよろしくお願いします! 山岸さんはバーンアップコーポレーションに入社された時、平日はフルタイムで別のお仕事をされていたとお聞きしています。
そうなんです。
平日はコールセンターで、「SV」というオペレーターの管理者をしていました。
なので実演販売の稼働はもっぱら土日。
バーンアップが抱えている案件を少しずつ回してもらっていました。
――バーンアップコーポレーションの実演販売士さんがたどる、稼働日の流れを教えてください。
朝、起きたら出発報告のメールをバーンアップに入れます。
現場に到着して手続きを済ませたら到着報告のメールを。
店舗担当者への挨拶も欠かしません。
その後は、売り場に届いているキャンペーン用の資材を開封して準備を始めます。
什器を出して商品を並べて、POPを目立つ場所に配置していざスタート。
時間がかかるので、販売開始の30分前には現場に到着するようにしています。
――だいたいどのくらいの時間、実演販売の現場に立っているものなんでしょう?
稼働時間は10:00~18:00というケースが多いので拘束は8時間ほどです。
案件にもよりますが、休憩もきちんと取りますよ。
――全国に行くんでしょうか?
僕の場合は関東近郊が多いですが、バーンアップには地方の仕事依頼も来ているようです。
泊まりの出張も大歓迎ですので今後は僕も挑戦してみたいですね。
――どうして実演販売をしようと考えられたんですか?
好きなことを仕事にしてみたかったんです。
飲食業界ではチェーン店の店長をはじめ、自分の店を出して閉める経験もしました。
そのあとは携帯電話の営業マンを経て、コールセンターでは新人オペレーターの研修担当に。
どれも人と接する仕事で楽しく取り組めていたので、「喋りで稼げるようになったら」という思いを抱えるようになりまして。
――実演販売を始めてみて、これまでの仕事と違いはありましたか?
現場に合わせた臨機応変さが求められますね。
初めて行く場所ではどこに立てば効果的か、どのような働きかけをすべきか、すぐには分かりません。
でも常に頭を研ぎ澄ませなければならない分、売れた時の達成感はひとしおですよ!
――どうやってお客さんの心をつかむんでしょう? 具体例を挙げていただけますでしょうか。
バーンアップの抱える “お客様” は多岐に渡ります。
来店客はイメージがつきやすいと思いますが、我々にとっては商品のメーカーや小売の店舗さんも “お客様”。
中でも、わたしの場合は店舗さんに気に入っていただくことを心がけていました。
――よい印象をどうやって残したんですか?
東急ハンズ渋谷店の方から「フロアに入ってもらうと売上がいい」とおっしゃっていただいて。
詳しく聞いてみたところ、店舗さんに敬遠される販売士って自分の取り扱い商品しか売らないそうなんです。
他社製品の知識が浅いのか、聞かれてもすぐに「ハンズの店員に聞いてください」と流してしまう。
でもわたしは、取り扱っている商品を販売するためにさまざまな製品の研究をしていました。
なので他社の品であってもすぐにお答えできたんですよね。
比較して優れていたら自分の取り扱っている商品を勧められますし。
他社製品を手にする来店客もいらっしゃいましたが、「いろんなものを売ってくださって感謝しています」と店舗さんに喜んでいただくことができました。
――でもそれって、ともすればメーカーという “お客様” の商売敵に塩を送る行為ともいえますよね?
そうですね。ただ今度は実際に商品を手に取る来店客の “メリット” に目を向けてあげたいんです。
――どういうことですか?
僕の得意とするヘルスケア用品を例にお話ししますね。
このコーナーにいらっしゃるお客様は、必ずお身体にトラブルを抱えています。
そこで、どのような悩みがあるのかヒアリングする。
ひとえに背中が痛いといっても、姿勢や腰痛、肩こりなどさまざまな原因がありますからね。
まずそちらをしっかり把握した上で、他社製品を含めた商品の説明をします。
なぜこのワンクッションがお客様の “メリット” になるかというと、「この人、僕の商品を買った方がいいんじゃないか」と販売士自身が商品を売る必然性を感じられるようになるから。
すると接客も自然になってリアリティが生まれます。
押しつけがましくなくなるし、自分の話をする / 聞くことで次第に信頼関係が芽生えるんですよね。
その上で「この商品を知っていますか?」「いかがですか?」と初めて自分の取り扱い商品をオススメします。
――そんなに手のうち明かしちゃって大丈夫ですか?(笑)
サービスです!(笑)
でもご提案後は、お客様の方から「買った方がいい?」って聞いてくださることも多くて。
「もちろん!」と笑顔でお答えして、「いくつお入り用ですか?」という形で数字をつくっていきます。
この方法は万能で、どんな商品にも当てはめることができるんですよ。
――ヒアリングするようになったきっかけってあるんでしょうか? 実演販売士って通りがかりの方に働きかけるイメージはあっても、受け身になって “聞いている” 姿があまり像を結びません。
そうかもしれませんね。
でも僕、お客さんがあまりいない時間帯は持ち場を放棄しちゃうんです。
それで健康雑貨のコーナーに入ってきた人のほぼ全員に挨拶して。
「このエリアは肩こりの方が多いんですけど、お客様もそうなんですか?」って。
ちなみに記者さんは肩こります?
――めっちゃこります! マッサージに行くと「肩に鉄板入ってるでしょ」って言われます!
ですよね。
まぶたが上がりきっていないから、そうだと思いました。
――えっ、そうなんですか?
はい。
それと普段から肩こう骨を動かしていないんじゃないですか?
何かしてます? 肩こり対策って。
――マッサージによく行きます。
マッサージに行かれるんですね。
月にどれくらいのペースで足を運んでいますか?
――月に2、3回でしょうか。
なるほど。施術時間は30分くらい?
――いや、がっつり60分とか。
ホントですか?
じゃあ一回につき7,000~8,000円くらいかかります?
――いつもお世話になっている方にかかると、そのくらいしますね。
映画なら3、4本は観られますね。
でも一時的に楽にはなっても戻ってしまうし、よくはならないでしょ?
――(声を強めて)なりません!
マッサージに行かれる方は、お身体にコリという “マイナス” がある状態なんです。
施術されると “ゼロ” になる。
でも次回まで何もしないと、また身体がマイナスをつくってしまうんです。
マッサージを受けたらまたゼロにはなりますが、これを続けていたら永遠に “プラス” にはならないんですよね。
なら肩こりに効果的な対策を、ご自身でも始めてみませんか?
そうするとマイナスになる幅が小さくなるから、次の施術でお身体がプラスの状態になるじゃないですか。
この繰り返しをしたら、マッサージにかけるお金に意味が出てきますよ!
――あれ? 何の商品かまだ説明されていないのに買ってもいいかな、という気持ちになっています(笑)。
(笑)。
それで「じゃあ少し立ち姿を見せてください」とお願いして、どこに原因があるかをお客様と探ります。
提案する商品は症状によって変える。
――だから他社製品の知識も入れておかないといけないんですね。
そうですね。
新商品を見かけたらパンフレットを家に持ち帰って、詳細はネットで調べてみたり。
接客に役立つような準備の一環ですね。
――バーンアップさんにそうしたノウハウを教えてもらったんでしょうか? それとも山岸さんご自身が編み出した手法なんですか?
新たな商品を販売する前には、社内で勉強会を行います。
そちらで基本的な商品知識を吸収できるような体制が整っていますね。
入社時には現場の入り方に関する丁寧な研修がありました。
僕はレクチャーを受けたらはじめから一人で現場に行かせてもらいましたが、最初のうちは同行してもらえるみたいです。
研修の教えをベースに、あとは自分でアレンジを加えていきました。
――実演販売デビューが独り立ちだったんですね! 現場に立つ上で大切にしていることは何ですか?
お客様をよく観察すること、でしょうか。
飲食業界でお世話になった師匠の教えに影響されている気がします。
バーテンダーをしている時に、よく師匠から「今夜どなたが店にいらっしゃって、何を頼むか分かっていないとダメだよ」と言われました。
毎回同じ品をお出ししているご常連のお客様に「ご注文は?」と聞くのは野暮ですよね。
よくいらっしゃる曜日などが分かれば会話も弾みますし、事前に準備もできます。
くつろぎにいらっしゃっているお客様を不必要に迷わせない、無駄のないサービスがよしとされていたんです。
修行を始めてから半年は “ドアの開け閉め” しかやらせてもらえませんでした。
最初のうちは「何の意味があるんだろう」と疑問に感じていたんですが、それは誰がどのくらいのペースで来て、何を召し上がって、いつごろ帰られるのかを把握させるためだったんだな……と気づきました。
――なるほど。実演販売にその観察力がどう活きたのか気になりますね!
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実演販売は人生を反映できる仕事、インセンティブで月収アップも
――バーテンダーの修行で身についた観察力が、実演販売の現場でどのように役に立ちましたか?
「この商品ってどんな人が欲しがるものなんだろう」と突き詰めて考える助けになっています。
例えば先ほどは失礼ながら「まぶたが上がりきっていない」と指摘し、「肩こう骨を動かしてます?」とお聞きする中で、その反応を拝見していました。
それで記者さんが肩こりに大変悩んでいる方だと察しをつけたんですよね。
マッサージに通う頻度や施術時間を答えてもらったのも、その一環です。
観察力のおかげで、現場にいらっしゃるお客様に合ったお声がけができるようになったと感じています。
――確かに何かを買いそうになりましたもん(笑)。これまでのご経験が実演販売に活きているんですね。そんな例は他にありますか?
チェーン店の店長経験で培ったのは、ヒト・モノ・カネの管理。
「今日いくら売らないと赤字になる」といった数字や経営感覚が、実演販売の世界で目標を達成したい気持ちを後押ししてくれています。
携帯電話の営業マン時代は、土日にキャンペーンの道具を持って販売店によくお邪魔しました。
新人スタッフと店を盛り上げようと、着ぐるみ姿でお店に立ったこともありますよ。
普通の人なら恥ずかしがることでも、僕は平気……というか、むしろ快感を覚えてしまうタイプ(笑)。
「アホなことしてるなぁ」と笑われるのも、うれしいんです。
――当時から実演販売の血がたぎっていたんですね! そのあとにコールセンターですか?
そうそう。
コールセンターには研修の講師として採用されました。
ここで学んだのは話し方ですね。
体系的なテキストを筋道立てて説明する経験は、実演販売にも役立っています。
ご高齢の受講者に失礼のないよう、キレイな言葉づかいやマナーを改めて勉強できたのも貴重な経験でしたね。
実演販売の現場には、さまざまなお客様がいらっしゃいますので。
――お聞きしていると、実演販売は山岸さんのご経験を全て注ぎ込める “天職” のように思えます。
そうなんですよね。
販売のスキルって受け身で “教わる” というより能動的に “身につける” ものだと感じていて。
大げさに言うと、販売士の人生が反映される。
これまでにしてきた経験の中から得られる、ささいな思いつきがヒントになることもあります。
トライ&エラー、創意工夫を繰り返しながら自分を表現できますし。
マニュアルが特にない自由度の高さも、僕には魅力的に映っています。
――自分の裁量で物事を進めたい方にはぴったりのお仕事ですね! では逆に、実演販売士に “向いていない” と感じる人って?
チームで結果を出したい、と考える人ですかね。
あとは感情を共有したいと思う方、縁の下の力持ちタイプはおそらく向いていない気がします。
目立つことや他人を笑わせることが好きで、「俺が」「わたしが」と前に出られる人は活躍できると思います。
だから実演販売の世界には、芸人や俳優を目指している方が多くいらっしゃるんですよ。
それにインセンティブがあるので、がんばって売った分が稼ぎという評価として返ってくる。
自分一人、腕一本で完結するスタイルがすごく励みになるんですよね。
――インセンティブは実演販売士の懐に入るとお聞きしています。どのような体系になっているんでしょう?
固定ギャラの場合、日給1万円程度からスタートするケースが多いみたいですね。
でもインセンティブはそうした傾向がなく、案件によるところが大きい。
ある程度の販売数までいったら1,000円……みたいな加算式を採用しているクライアントさんがけっこういらっしゃいます。
ちなみに僕、「売れなかったら交通費しかもらえない」っていう仕事をしたことがありますよ。
でもインセンティブが高額だったので、がっつり稼ぐことができました!
――売れないと交通費だけって……ヒリヒリしますね!
そうした案件は高額商品に多いんですよ。
今回は14万円くらいする健康雑貨を一台売ると2万円が販売士に入るというお話でした。
たいてい一日1台売れたら “御の字” ですが、3台売ったことがあって。
――お会いしたその日に3台売って、42万円を売り上げたんですか?
そうですね、日給6万円の仕事になりました。
これを20日続けたら、単純計算で月給120万も夢じゃないんだなって。
もちろん曜日や季節によって売れ筋も異なるんでしょうけど。
――サラリーマン時代と比べて、あっという間に高給取りですね!
最初は単なる皮算用ですけど、どんどん実現していくんですよ(笑)。
今ではおかげさまで、サラリーマン時代と同じくらいには稼げるメドが立ちました。
それを機に独立して個人事業主になったんですよ。
――そうだったんですね! 他にはどんな種類のインセンティブがあるんでしょうか?
健康食品ですと定期購入の契約を一定数いただいたら、その時点で一度インセンティブが発生します。
そのあとはいわゆる “青天井” で、契約を取れば取るほどプラスになる案件も。
だから閉店ギリギリまで粘ってみよう! という気になります。
――プロの世界を垣間見ましたが、反対に山岸さんは現場で失敗した経験ってあるんでしょうか?
トラウマ級のがありますよ~!
スポーツクラブのロビーで一個2万円の枕を売る企画があったんですけど、3日間入ったのにひとつも売れなかったんですよね。
――14万の健康雑貨を一日に3台も売ったことがあるのに?
3日目に衝撃の事実を知りました。
スポーツクラブの会員さんが言うには、「1ヵ月前にもここで枕を売ってたよ」って。
その商品は5,000円くらいで、その機会にお求めになった方が多くいたようでした。
本当に、どう働きかけてもダメだったんです。
折しも実演販売の仕事に慣れてきて、ちょうど「ヘルスケア用品なら任せろ!」と天狗になっていた時期。
ちょうどよかったのかもしれませんけど。
――でもそれって、山岸さんが原因ではなかったのでは?
その時に5,000円の枕を買っていない人もいるはずなんですよ。
「いいな」「気になる」と感じていても行動に移せなかった層に訴求できなかった。
託された3日間を振り返って、「ちゃんと準備しきれていたのかな……」と反省で落ち込んでしまって、気持ちを切り替えるのが大変でした。
――結果が出なかった場面でもプロ意識が炸裂していらっしゃいます。数ある実演販売会社の中でも「バーンアップコーポレーション」で働く魅力やメリットを教えてください。
規模が大きくない会社なので風通しがよいところでしょうか。
どんな方が働いているのか顔がしっかり見えますし、話を聞いてくださる機会も多い。
販売士を大切にしてくださっている風土を感じています。
それにウチは社長の酒井をはじめ、実演販売の経験が豊富な方が集まっている会社。
会って話すだけで毎回新しい発見があるんですよね。
目標としている販売士の一人に、同じくバーンアップに所属しているモーリー・小森さんがいらっしゃいます。
モーリーさんの映像や、現場にお邪魔してトークの間合いを勉強させてもらったりもしていて。
さまざまな刺激を受けられる環境が広がっているんですよ!
――ありがとうございます。最後に、販売のプロを目指そうと考えている方にメッセージをお願いします。
自分の腕ひとつで商品がどんどん売れていき、お客様にも喜んでいただける。
わたしにとって実演販売は、達成感を覚えるシーンがたくさん待ち受けている最高の仕事です。
一人でも多くの方に興味を持っていただいて、門を叩いてもらえたらうれしいですね!
★実演販売士が所属する「バーンアップコーポレーション」のバイトはこちら!★
取材・文・撮影 / 岡山朋代