社会で通用する「価値ある教育」を――ドバイのCSRから学んだインフラトップ大島氏の就活サポート論

- 大島 礼頌(おおしま あやのぶ)
- 株式会社インフラトップ 代表取締役CEO
1991年生まれ、茨城県ひたちなか市出身。法政大学2年の時にベンチャー企業で営業を経験。大学3年でドバイの現地企業からスポンサー契約を得てCSR(企業の社会的責任)を担う一般財団法人SGF財団を創立。2014年に株式会社サイバーエージェント・ベンチャーズにアソシエイトとして参加。同年11月より株式会社インフラトップ(最寄り駅:渋谷)を設立し、プログラミング教育事業を展開。2015年4月より新卒で株式会社リクルートホールディングス入社。IT戦略マーケティンググループに従事し、のちに現在の業務に専念する。「学びを実践し、実績を積み、実利を得て、更に挑戦していく」という教育プログラムのもと、Webデザイン・プログラミングの講座を運営、就職や転職のサポートを行う。
スキルアップした力を、実践に活かすための教育プログラム

―大島さんの業務内容を教えてください。
大きく分けて2つあります。 1つ目は、戦略の策定と浸透をすることです。プログラミングスクールを運営していますが、受講生はキャリアアップやスキルアップを目的に通われています。ノウハウを修得したら、転職や就職を考えている方も多いので、皆さんの力を最大限に社会で活かせるような戦略を考えています。組織が40名ほどなのでマネージメントにも力を入れています。
2つ目は、財務戦略の策定です。もっとマーケットに対峙して小さなビジネスではなく大きなビジネスをやりたいと思い、半年ほど前から資金調達に力を入れていています。社員みんなが攻める姿勢で取り組んでいます。
―大島さんの仕事のやりがいは何ですか?
弊社の教育プログラムによって、プログラミングのスキルが無かった人がしだいにスキルを身に付け、自信がつくと表情が変わります。そしてスキルを活かしてキャリアアップをしている生徒さんを拝見するととてもやりがいを感じます。
“できること”が増えれば、選択肢も増えるんです。自分から仕事を選べるだけの力がついた証拠でもあります。そういう表情をたくさん見たいんです。
―御社のプログラミングスクールに通われるのは、どのような方なのでしょうか。
短期間でキャリアアップやスキルアップの力を身につけたいという方が多いですね。男性と女性の割合だと7対3です。現在は女性の割合も増えていて、主婦やママ限定コースも人気です。子育ての合間の副業にしたいと取り組まれる方も多いです。
どんなにつらくても、前へ進み続けたSGF財団の活動

―大島さんは学生時代にドバイの企業からスポンサー契約を得て「CSR」(企業の社会的責任)に関する仕事をされていますよね。どのようなきっかけがあったのですか?
大学3年の時に赤坂で偶然ドバイのコンサルティング会社にいる日本人にお会いしたんです。ドバイでは、企業が売上の次に重視しているのが社会貢献、すなわち「CSR」なんです。
大学で社会学を学んでいたこともあり、勉強していた内容を実務的に活かしてみたいと思っていましたので、話を聞いていて終始ワクワクしていました。
ちょうど日本では東日本大震災の直後だったこともあって、復興関連のプロジェクトに関わりたいと思っていましたし、復興を目指すうえで社会課題の大きさを感じていました。話を聞いてから一週間程度ですぐに動きましたね。
そのドバイにある企業のCSRに関係する業務を私が引き受け、一般財団法人SGF財団を設立しました。
―大島さんが実際に取り組んだCSRはどのようなことでしたか?
被災地の南相馬市でイベントを開催しました。東京から学生を300人近く連れて、南相馬市の特産品を現地でPRしたんです。当日は2000人以上の来場があり、マスコミも数十社来るほどの反響でした。
このように私たちが行っていた業務はNPOに近いのですが、社会貢献をしながら社員にお金を払うシステムはとても難しかったですね。それが、当時の自分の課題でもありました。
―苦労した点はありましたか?
はい。当時、多くの企業様から1500万円のスポンサリングによる資金調達を見込んでいたんです。ところがスポンサー側とのミスで1230万円の入金しかならないことが発覚して、大学3年生で約300万円の借金を背負うことに……。
あの時はきつかったですね。未払いになってしまった30件から毎日電話が入り、1週間に1回警察からも連絡が来る状態。毎週、東京から福島まで向かって、一軒ずつ謝りに行く生活が続きました。
半年ほどで返済できたのですが、その時に“責任感”と向き合いましたね。仕事をする以上、どんなにつらくても逃げることなく、今やるべきことを一生懸命やろう、と。その習慣が今でも身についています。
「価値ある教育」を追求する目的とは?

―現在、プログラミングスクールを運営していらっしゃいますが、大島さんが考える「価値ある教育」とは何でしょうか。
自己実現にダイレクトにつながる教育ですね。夢を叶えるためには、スキルが必要になることも多い。価値あるスキルを身につければ、仕事で活躍することもできますし、周囲からの評価も高くなります。
そうすれば、新たなチャンスが巡ってくる。プラスのスパイラルが形成されるんです。「価値ある教育」とは、そのための“手段”ですね。
―では、ご自身にとっての「価値ある教育」とは、どのような部分だと考えていますか。
私自身における「価値ある教育」とは、経営者としての教育だと思っています。 10月から、株式会社インテリジェンス創業メンバーである島田亨(しまだ とおる)さんが弊社顧問に就任されていますが、島田さんのように自分よりも先を(圧倒的に)進んでいる経営者の先輩たちから多くのことを学んで、自分のスキルに結びつけていくことが、今の自分にとって大切な教育だと捉えています。
そうすることで会社の発展にもつながります。今はプログラミングスクールが主となって運営していますが、今後は「価値ある教育」をより多くの方に提供できる環境をつくっていきたいとも思っています。
―現在、御社ではインターンやアルバイトも募集されているのですか?
ガンガン募集しています。弊社の実務を通して社会とのつながりをつくったり、スキルを身につけることも、後輩育成のための「価値ある教育」だと考えています。だから、インターンなどの受け入れも積極的に行っているんですよ。
学生のうちは知識も経験もないのは当たり前なので、弊社で働くことによってゼロから社会人として戦える人材に育てたいんです。インターン生にはマーケティングの仕事も担当してもらっているのですが、SEO対策や広告運用、広報PRなど、どの企業でも必要とされるマーケティング実務を覚えることができます。
学生であっても、ちゃんとスキルがついて育ってくると、自信がついて本人の目の色が変わるんです。社会人になった時に、きちんと社会で通用する人材になってほしいので、本人もそれを理解してがんばるインターンやアルバイトが多いんです。
第六感を信じて。言語化できないものこそ、自分が歩むべき道。

―では、大島さんが学生時代に注力されたことは何ですか?
大きく2つあって、まずは勉強はしっかりやっていましたね。大学ではほとんど学んでいませんが。勉強はしていました。
勉強はその人の“思想の軸”であり、物事の捉え方を形成するものです。社会に出たら、その“思想の軸”をもとに行動や判断をしていかなければいけません。だから、本を読んだり、意欲的に自分を学びの環境に置いていました。
2つめは、SGF財団の活動です。学生だったこともあって、失敗してもいいから行動する大切さを学びました。その考え方は、今の仕事にも結びついていると思っています。
―アルバイトはされていましたか?
はい、大学1年生の時に半年間だけ居酒屋でキッチン業務をしていました。料理をつくるのが好きでしたし、いかに早くおいしく出すか、効率的に出すかを工夫しましたね。
―就職活動はされていましたか?
はい、先ほどお話した島田亨さんに高校時代から憧れていたので、島田さんにゆかりのあるインテリジェンスとリクルートを受けました。
学生の皆さんが就職活動をする際は、“第六感”を信じてほしいと思います。いろいろと迷ったり悩んだりすることもあると思いますが、案外、言語化できない部分が正しいんです。そのためにも、多くのものを見て、自分の気持ちが一番動くものを大事にしてほしいです。
教育を充実させて、すべての人を「価値生産者」にしたい

―仕事をするうえで大切にしていることは何ですか?
2つあります。1つめは、相手の期待に応えること。依頼された内容以上の仕事をして、お応えをするようにしています。それを積み重ねていくことで、信頼感が強まったり、次のチャンスが訪れやすいからです。
2つめは、スピードです。とにかく早さを大事にしています。よく「一度、持ち帰って考えてみます」という受け答えがありますが、それでは遅いと思っています。
人間誰でも与えられた時間は24時間で共通です。時間が限られているからこそ、即決して次の行動に移るようにしています。間違えても、その時に最適な選択をして、行動に移せばいいんです。
―大島さんの今後のビジョンを教えてください。
すべての人を“価値生産者”にしたいですね。教育を受けることによって、スキルにつながり、選択肢が増えます。それは仕事も選択できる事を意味しますし、チャンスも多くなります。社会でバリバリと活躍していく人を増やしたいです。
現在、弊社のプログラミングスクールの強みとして“継続率”が挙げられます。途中でやめてしまう受講生が少なく、他社と比較して1/2以下です。
―どのような工夫をされているのですか?
スクールにいなくてもインターネット上でわからないことを質問できたり、大学と連携してデータに基づいた学習環境を整えています。学習って、苦手でも継続していれば身についてきます。オンラインで自分のライフスタイルに合わせて継続できるので、つまずきにくいんです。
受講生の皆さんにも満足していただけるようなスクールを展開していきたいですし、いずれはプログラミングマーケットのナンバーワンになりたいと思っています。
―最後に、これから社会に出る学生に向けて、メッセージをお願いします。
たとえアルバイトであっても、その場で圧倒的な成果を出せるよう取り組んでほしいですね。“手を抜かないこと”って大事です。妥協しないで徹底的に“やりきる”という意識で取り組んでください。その気持ちが、自分の次の行動の原動力になります!

[取材・執筆・構成]yukiko(ユキコ/色彩総合プロデュース「スタイル プロモーション」代表) [撮影(インタビュー写真)・編集] 真田明日美