『めんトリ』でおなじみ『面倒だがトリあえず返信』のインクルーズに、トリあえず野望をきいてみた。

- 株式会社インクルーズ
- 写真右/山崎 健司(やまざき けんじ) 代表取締役社長CEO
写真中/森中 真(もりなか まこと) コンテンツ事業本部 部長
写真左/田中 天(たなか てん) キャラクター事業本部 広報兼ディレクター
パーソナルデバイス向けのコンテンツサービスを企画・運営。きせかえカテゴリーで国内1位のシェアを誇るきせかえセレクトショップ『きせかえ×キセカエ』やLINEスタンプ等を中心としたデザインコンテンツ事業、ゲーム事業を展開する。
LINEスタンプ『面倒だがトリあえず返信』と、オリジナルキャラクター『めんトリ』の大ヒットを受け、『めんトリ』ライセンス事業・EC事業も開始。2016年10月には台湾への進出も実現した。
設立/2017年1月18日(創業/2001年8月13日)
本社所在地/〒151-0051 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-15-10 北参道ヒルズ1F
最寄り駅/北参道または千駄ヶ谷
『面倒だがトリあえず返信』
返信がめんどうな時や、適当に返したい時に使えるスタンプとして2014年10月にリリース。愛くるしい見た目に反してシュールに、時にアグレッシブな動きで反応する小鳥のキャラクター『めんトリ』は、日本、台湾にて絶大な人気を博している。
スタンプは「LINEクリエイターズスタンプ」だけ(※「LINE公式スタンプ」及び「LINE広告スタンプ」は除く)で、シリーズ累計226万以上の有料販売ダウンロード数、総スタンプ送受信数では23億回を記録(2017年8月現在)。
『めんトリ』関連の商品化数は至近1年間で200種類を超え、2017年の年末までに更に100種類の商品化が予定されている。
『めんトリ』公式サイトはこちら。
※本文内の対象者の役職はすべて取材当時のものとなります。
みなさまこんにちは。弊社スタッフに「『めんトリ』に似てますね」って言われました。顔じゃなくテンションのほうらしいのですが、それもどうなのか。Career Grooveの編集ライター・真田です。
株式会社インクルーズ代表の山崎健司さんが前回の取材から2年を経て、ふたたび登場!『面倒だがトリあえず返信』シリーズの大ヒット後、 インクルーズ社内ではどう変わったのか?そして、気になる『めんトリ』の今後の展開は……?
山崎さんをはじめ、LINEスタンプを担当する森中さん、そして第二新卒でインクルーズに入社し『めんトリ』の広報とディレクションをつとめる田中さんに、詳しくお話をきいてきました!
「めんトリの社長」ヤマケンこと山崎健司さんに、インクルーズの今後を聞く

―山崎さん、ご無沙汰しております。2年前の取材から山崎さんご自身に何か変化はありましたか?
山崎:一番大きな変化は、今年(2017年)の2月にMBO(マネジメント・バイアウト)をした結果、僕が筆頭株主となり、オーナーになったことです。そのため、事業の方向を自分の判断で仕切れるようになり、また決定までのスピードも上がりました。
特に『めんトリ』のようなキャラクター事業の場合、先行投資が必要になってきます。それまではなかなか思い切ることができなかったことが、かなりやりやすくなりましたね。
―『めんトリ』はスタンプだけでなく、グッズもどんどん発売されていますね。海外進出も果たし、御社も四谷三丁目から北参道に移転されました。
インクルーズは創業して16年以上経つ、IT企業でも老舗の会社になりました。僕自身、インクルーズの立て直しのために10年前に入ってから今まで、本当にいろんな事業をやってきたな……と感じています。
今後は『きせかえ×キセカエ』やLINEスタンプといった、デザインを武器にした「デザインコンテンツ事業」、そこから派生した『めんトリ』を主力とする「キャラクター事業」の、この2軸をもっと強化していきたいですね。
―これから多くの人材が必要になるかと思います。Twitterでちらりと「インクルーズに転職したい人いるかな」といったつぶやきをされていましたが、理想の人材像を教えていただけますか?
山崎:やっぱりポジティブ思考の人がいいですね! というのも、弊社はベンチャー企業らしく新規事業をどんどん行っているので、最初から「失敗するかも」と考える人には向かないと思います。
僕はこの『めんトリ』のキャラクター展開は絶対に「イケる」と思っていましたし、最後に勝てる人というのは “絶対成功する” と信じぬくことができる人だと思っています。
―おっしゃる通り、『面倒だがトリあえず返信』シリーズはもちろん、『めんトリ』のキャラクタービジネスも大成功といえますが、勝因はどこだと思われますか?
山崎:キャラクターそのものの魅力ももちろんありますが、日本国内のキャラクター展開に関しては、代理店には預けずに、自社内で専任の部隊を作り、私自身も先頭に立ち、チーム一丸でライセンシー様に営業しまくったことが一番の勝因だと思っています。
代理店に任せると、当たり前ですが『めんトリ』の商品化に対する熱量も下がります。それに自社キャラクターですので、ライセンシー様の難しい要望にも柔軟に対応できることは非常に強みですよね。僕の方で、その場で即断即決もできますので(笑)。

―前回の取材では海外展開の一歩として、まずはマーケットの大きいタイを攻めていきたいとおっしゃっていましたが、タイよりも台湾で『めんトリ』のスタンプが大変な反響だったようですね。
山崎:タイではタイ語版でもリリースしたのですが、残念ながら当たらなかったんです(苦笑)。でも切り替えて台湾で台湾語版をリリースしたところ、これが異常な売れ行きで……台湾の人口は2,250万人とそれほど多くはないのですが、17年5月に無料配信した『めんトリ』LINE広告スタンプは一瞬で480万ダウンロード。台湾の『めんトリ』ファンは本当に熱狂的ですよね。
それで、今年はもっと台湾で攻めていこうと、台湾の人気キャラクター『バイバイチューチュー』とのコラボを皮切りに、台湾の一番良い場所で『めんトリ×バイバイチューチュー』の期間限定コラボカフェを7月から開いてみたりしています。
お陰さまで『めんトリ×バイバイチューチュー』コラボカフェは初月の売上が1,000万円を超え、その勢いを受けて、台湾のファミリーマート3,100店全店での『めんトリ×バイバイチューチュー』コラボキャンペーンが9月中旬より開始する事が決まるなど、想定以上の大成功でした。
―今後、インクルーズが目指す将来の目標を教えてください!
山崎:まずはインクルーズを上場まで持っていきたいですね。特に『めんトリ』のようなキャラクタービジネスの規模は2兆4,000億円と非常に大きいので、他社との差別化を図りながら大きく成長させたいです。
同時にデザインコンテンツの企画・販売力も日本国内でトップクラスのシェアを持っていますが、次はアジア圏でもトップを目指していこうと思っています。
大ヒットコンテンツを生み出した、「めんトリのスタッフさん」たち

写真右/森中さん
―それでは、『めんトリ』に深く関わっておられる森中さんと田中さんに、お話をうかがいたいと思います。
まずは、お二人のお仕事内容を教えてくださいますか?
森中:私は「コンテンツ事業本部」の部長をしております。うちの事業部は昔からモバイルのコンテンツビジネスをずっとやらせていただいていて、主力は『きせかえ×キセカエ』とLINEなどで使われるスタンプ制作配信事業です。
田中:私は第二新卒としてこのインクルーズに入社し、「キャラクター事業本部」で『めんトリ』の拡販や商品企画を担当しています。事業部は昨年10月にできたばかりで、私もそのタイミングで入社しました。肩書きは広報兼ディレクターとなっています。
森中:それまでは私の事業部で『めんトリ』を担当していたんですが、キャラクタービジネスとしてもっと拡大していけるように、新たに「キャラクター事業本部」を立ち上げたんです。それにふさわしい人材を、ということで、入社してくれたのが彼女だったわけです。
田中:入社するまではどの部署に配属になるのか全然知らなかったんですけれど(笑)。
―田中さんは社会人2年目で、すでにそのような責任あるお立場なんですね!
入社したのは、やはり『めんトリ』がきっかけだったのですか?
田中:そうでなんです。『面倒だがトリあえず返信』のスタンプができて10月でちょうど3年なんですが、第1弾ができた時、私はまだ美大の学生でした。
『面倒だがトリあえず返信』スタンプを見た時「(一人のフリーデザイナーじゃなく)企業がLINEのクリエイターズスタンプつくっているんだ」って興味を持ったんです。
入社した時は『めんトリ』はまだキャラクターとしての認知度は低かったので、もっとグッズを出して認知拡大ができればと思っていました。そこでTwitterやInstagramを活用してみようとか、試行錯誤しながら今に至っているという感じです。
―もしかして、Twitter『めんトリのスタッフさん』の中の人って、田中さんですか?
田中:9割9分私です(笑)『めんトリ』Twitter公式アカウントは、キャラクターとしての『めんトリ』がつぶやいているので、たとえばフォロワーさんから「グッズ欲しい」とリプライが来ても「(スタッフじゃないと)わかんない」と言うしかなかったんですが、スタッフ用のアカウントをつくることによって、よりユーザーさんの声をきちんと拾うことが可能になりました。
森中:『めんトリ』はもともと「返信するのがめんどくさいキャラ」だったのに、公式アカウントのほうはずいぶん「商売熱心だよね」「宣伝がんばるね」って言われていたんですよね(笑)。そういった課題を解決するスタッフアカウントという彼女のアイデアは、すごく良かったと思います。

―なるほど。実際に、ユーザーの声から商品化されたものもあるのですか?
田中:毎月、『めんトリ』のECサイトである「めんトリストア」のキャンペーン商品のために、ユーザーさんの声を聞いてつくられたものはあります。Tシャツですと「どんな柄がいいか」というのをユーザーさんに聞いてみたりしました。
それが実現すると「自分のデザインが通りました!」ってユーザーさんもツイートしてくださったりするんですよね。それもとても嬉しいし、Twitterを通してユーザーさんとのやり取りを全部見ることができるのも、おもしろいですね。
『めんトリ』の誕生! こだわりぬいたデザインのヒミツ
―『めんトリ』はどのようにして生まれたのでしょう?
森中:僕たちはもともと『ムーミン』や『あらいぐまラスカル』『進撃の巨人』など、100ほど版権キャラクターをお借りして、「きせかえ」を中心としたデザインコンテンツをつくっていました。けれども、やっぱり自社のオリジナルキャラクターに挑戦したい、という思いがずっとありました。そこで、LINEスタンプに挑戦してみようと。
山崎の前のインタビューでも話があったかと思いますが、もともと2つあったデザイン部門を競わせるために、社内でスタンプのデザインコンペをやったんです。そこで、『めんトリ』案が出て、それが大当たりして……。
実は僕がいた部署はハズしたほうで(笑)。でもスタンプ第3弾の企画から、僕も入らせてもらっています。
―そうだったのですね。『めんトリ』のデザイン面で、工夫した点というのはお聞きになっていますか?
森中: “無表情さ” というのはずいぶん徹底されていたようです。デザイン側がいくつか案を出しても、監修しているディレクターが「表情がつきすぎていてダメ!」って返すことも多いそうです。
―無表情(笑)。
森中:最近はずいぶん愛想がよくなっていますが(笑)。あと工夫したところといえば、あの紫色のカラーリングですね。当時のクリエイターズスタンプって、白いキャラクターが多かったんです。人気トップ10のキャラクターがほぼすべて白で埋まるくらい。……それで、目立つ色として「紫」を使ってみたというわけです。
―あの紫ボディには、そんなヒミツがあったんですね!
『面倒だがトリあえず返信』が出たころは、ちょうど世間でSNS疲れとか、LINEの既読スルーといった話が増えだしたころだと記憶しています。そのようななかでワザと返信で「イラッ」とさせるスタンプ、というのは、新しいなと思いました。
森中:「かまってちゃんに対するアンチテーゼ」的なところはありましたね。これは結果論になってしまいますが、スタンプってその人の自己表現、自己投影なところがありますよね。だから、キャラクターに表情がつきすぎると「媚びている」ように見えたり、逆にエッジがききすぎていると「ウケ狙いだな」とも捉えられかねない。
その点、『めんトリ』は、カワイイけれどなんかイラッとする……と、うまくバランスがとれていて、それが受け入れられたのかな、と感じています。
―大ヒットコンテンツを手がけているという、実感のようなものはありますか?
森中:僕はインクルーズには出戻りで、前職は大手ソーシャルゲーム会社だったのですが、自社で売れるものをつくるのって本当に難しいんです。
今ようやくここまでたどり着き、世間に広げていけるというのは、本当に幸せなことだと感じています。

―『めんトリ』の初めてのグッズ化はゲームセンターのプライズだと聞いております。どのような経緯で実現したのでしょう?
森中:スタンプがバズったタイミングで、中堅のプライズメーカーさんからお声がけしていただきました。
テレビ番組の視聴率のように、プライズの世界でも「この数字に達しなければ次はない」という指標があるのですが、おかげさまで『めんトリ』の場合、第1弾が目標を上回って、第2弾・第3弾……と出すことができました。
―私もゲーセン大好きでよく行くのですが(笑)『めんトリ』のプライズって、すぐなくなっちゃうんですよね。
森中:第4弾から新たにお世話になっているタイトーさんの商品企画力の賜物かと思います。第13弾までリリースしていますが、Twitterで「プライズ出ましたよ」って告知しても「近くの店舗に行ってみたけど、もうないって言われた」というお声も、お陰さまでいただいております。
―1年で200種類ものグッズ化を実現されていますが、「大変だな」と思う時はどんな時ですか?
森中:30%は自社で商品化し、70%は他社様に商品を企画頂いている状況ですが、それぞれ企画には携わりますので、やっぱり、新しい企画やアイデアを生み出し続けるのは大変ですよね。
田中:新しいものを生んでいくという、その流れをつくるのが特に……。
森中:でも、たとえば何かアイデアを出すにしても、デザイナーさんが一人でがんばるのではなく、プランナーさん含め、チームとしてやっていけるのは弊社の良さであり、強みでもあると思っています。
特にスタンプは相手の受け答えがあってこそですから、一人でシュミレーションしても実際の使い勝手が分かりづらいところがあります。
チームでやれるからこそ「このスタンプはこういう時に返せるね」というように、アイデアのとっかかりや、可能性が広がりやすいかなと感じています。
―『めんトリ』には「イモウト」や「ヒデヨシ」など、個性豊かなキャラクターも出てきていますね。今後も新しいキャラクターは登場するのでしょうか?
山崎:僕の方にはまだその話はありませんが、もともと「イモウト」や「ヒデヨシ」も、僕や森中やチーフデザイナーが「キャラを増やしたい」という考えがあって生まれたので、可能性はなくはないと思います。
けれど、今はあまり無理して増やしてもなぁ……という具合ですね。もしそれが当たらなかったら「これ誰だっけ?」となっちゃうので(笑)。
クリエイターの可能性とチャンスを広げる! インクルーズの社風

―森中さん、田中さんご自身が、それぞれ目指していることを教えてください!
森中:『めんトリ』自体ももっと認知度を拡大したいですが、僕自身は『めんトリ』に続く新しいキャラクターを生み出し、それをヒットさせるのが今の夢ですね。
田中:『めんトリ』のお店、実店舗をつくりたいです! 今はなかなか、季節商品が継続的につくれない状況なので、それを供給できるだけのお店が出せるようになればと思っています。そのためにも、もっと『めんトリ』の認知度を高めたいですね。
インクルーズは、どんなことでもまずは挑戦させてもらえる環境があるので、これからも楽しく仕事をしたいなと思っています。
―MBOを経てインクルーズ社内の空気も変わったのではと思いますが、たとえばお二人から見て、社長である山崎さんはどんな方ですか?
田中:そのまんまですが「社長!」っていう感じでしょうか。 行動力はあるし計画を立てるのも早いし、尊敬しています。
森中:僕はそうですね……何といえばいいかな。
山崎:お昼に来ても怒らないとか?(笑)
森中:ああそうですね、そこらへんは甘く見ていただいていますね(笑)。有給もすごく増えて、休みやすくなりました。
山崎:僕自身、「結果をきちんと出してもらえれば、あとは自由にやってもらえばいい」という考えなんです。仕事の進め方は人それぞれですからね。
―クリエイターにはすごく働きやすい環境があるのですね!
では、皆さんから、インクルーズに興味のある方や、皆さんのようなクリエイターを目指している方に対して、メッセージをお願いします。
田中:もしインクルーズで「働いてみたいな」と思っている方がいらっしゃいましたら、まずは一度、ご連絡いただければと思います。私も「お問い合わせフォーム」から「採用してください」って連絡しました(笑)。そういった挑戦を受け入れる会社です。
『めんトリ』のほうは、今後もたくさんグッズをつくったり、いろんな方面で活躍させたいと思っていますので、楽しみにしていてくださる方、今後もよろしくお願いします!
森中:今は、誰でもクリエイターになれる時代だと僕は思っています。一人のクリエイターが独立してやっていくのももちろん素晴らしいことだと思いますが、やはり先ほども申し上げた通り、チームに入って働くことは、それによって可能性が広がったり、自分の技術を向上させたりといったメリットもあります。
将来クリエイターでやっていこうと考えている方は是非、「企業で働いてみる」というのを、一つの選択肢にしていただければと思います。
山崎:今後はAIを含め、ITが確実に、人間の仕事をどんどん奪っていくでしょう。そのなかで唯一残っていけるのは、デザインやプランニングなど、クリエイティブなことだけです。
クリエイティブなことはその人の付加価値となり、ほかとの差別化につながるスキルです。我々は、そういう部分をどんどん伸ばしていける会社を目指していますし、皆さんにも伸ばしていってほしいなと思います。
自分の中で差別化できるものをきちんと持つこと、さらに、自己発信力を高めていくこと。それを意識して、がんばっていただければなと思います。

〒151-0051 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-15-10 北参道ヒルズ1F
東京メトロ副都心線 北参道駅より徒歩約4分
またはJR総武線 千駄ヶ谷駅より徒歩約6分
[取材執筆・構成・インタビュー写真撮影]
真田明日美
『Career Groove』編集長兼ライター。歴史系雑誌書籍の編集者を経て現職。旅とゲームとアートを愛する真田幸村直系子孫。某タイステでゲットしてきた『めんトリ』を2羽飼育中。徐々に身の回りが紫色グッズであふれ始め、「めんトリに貢いでいる」と身内スタッフにツッコまれた。
※面識のない方からのFacebook友人申請はお断りしております。ご了承ください。