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“生きる力”は自分の行動によって身につく
―経験を増やして市場で求められる人材になろう―

株式会社ジーンクエスト 高橋祥子
高橋 祥子(たかはし  しょうこ)
株式会社ジーンクエスト 代表取締役社長

1988年生まれ、大阪府出身。幼少期の2年間、フランスで過ごす。2010年京都大学農学部卒業。2013年6月、東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程在籍中に株式会社ジーンクエスト(本社最寄り:五反田[2015年8月移転])を設立。2015年3月、博士課程修了。生活習慣病など疾患のリスクや体質の特徴など約290項目におよぶ遺伝子を調べ、病気や形質に関係する遺伝子をチェックできるベンチャービジネスを展開。一般生活者向けに病気リスクや体質などの情報を伝える遺伝子解析サービスを行う。10年後に世界を変えるビジョンとテクノロジーを持った企業に送られる「リアルテックベンチャー・オブ・ザ・イヤー」を受賞。受賞歴はAsian Congress of Nutrition Best Poster Award、ネスレ栄養科学会議論文賞、HMTメタボロミクス先導研究助成 奨励賞、東京大学大学院農学生命科学研究科長賞受賞テクノロジー&ビジネスプランコンテスト 優秀賞。

遺伝子からわかるデータを有効活用し、人々のために還元したい

ジーンクエスト遺伝子解析キット

―まずは、ジーンクエストの事業説明をお願いいたします。

  個人向けの遺伝子解析キットの販売をしています。インターネットで申し込んでいただくと解析キットが届き、そこに唾液採取キットが入っています。唾液を入れて返送していただくと約1か月後にサイトのマイページ上で自分の遺伝子情報を知ることができるサービスです。

  遺伝子情報のなかでも病気のリスクや体質、自分の祖先がどの大陸から来たのかなど祖先の情報まで幅広く約290項目をお伝えしています。今は病気のリスクを把握したい方の依頼が多いです。ガンや生活習慣病、高血圧など遺伝的要因のリスクを事前にお伝えすることで、病気予防のための情報を提供しています。

  将来的には、そのサービスによって蓄積されたゲノムデータを有効活用したいと思っています。現在、東京大学と産業総合研究所の共同研究を始めていて、社会へ還元できる新しい取り組みへ発展させようとしています。

―仕事のやりがいを教えてください。

  ゲノムデータが集まってさらなる研究の先に何ができるのか、新しい活用を見出して、きちんと応用までサービスとして社会へ還元していきたいと考えています。その様子を自分の目で見てみたいんです。

  遺伝子の機能は解明できていない部分も多く、現在、原因や治療法がまだつかめていない疾患に対してゲノムデータを研究することによって明らかになる可能性があります。ヘルスケアや医療分野で確実に社会に貢献できると思っているので、遺伝子キット販売のビジネスで終わらず、スケールの大きな研究をして新しい価値を見出したいという点が自分のやりがいであり、モチベーションになっています。

―研究内容を極めるだけではなく、社会への還元意識を持って研究をしていらっしゃる印象を受けました。その意識は起業したことと関係がありますか?

  始めは起業したいという考えは全く持ってはいませんでした。私の家系にはアカデミックな人たちが多くて、どちらかと言うと、起業して社会に向けて営利活動をするよりもコツコツと職人的に仕事をするのが美徳という環境でした。。

  ただ、今私が取り組んでいるゲノム解析事業は大学の研究だけでは完結しないスキームです。私たちが持っているノウハウを活かして社会に貢献していくには、経済的に継続可能な形での研究と学術的な知識創造を加速しながら、学術的な成果をすぐに社会にフィードバックできるような仕組みが必須だと考えました。自分が想像したことを実現するため、あくまで手段として“起業”をしました。

―一般ユーザー向けのサービスを展開しようと思ったきっかけは何ですか?

  一般向けの遺伝子検査のサービスはもともと存在していたのですが、個人に向けて研究成果を活用し、根拠に基づいたサービスを提供したいと考えていました。国の税金を使って研究をしているので、皆さんにサービスとしてきちんと提供できなければ、私たちの研究は“国の損失”にもなってしまいます。

  研究者が一生懸命研究した情報がねじ曲がった使われ方をしないためにも、社会にどのように活かされているのか把握し、発展させていきたいのです。

海外生活で育まれた、個性の尊重

高橋祥子社長の幼少期について

―高橋さんは幼少期の2年間をフランスで過ごされた経験をお持ちですが、印象に残っている経験はありますか?

  物心ついた5歳から7歳の時にフランスにいて、現地で過ごしている間は“外国人”扱いをされることは多かったのですが、いい意味で“人と違う”のが善しとされる環境でした。たとえば、家にあがるときに靴を脱いだり、電話に出る時に「もしもし」と言う日本独特の習慣に、その都度、現地の友達は興味や好意を持って接してくれていたんです。

―そのころの経験が今につながっていることはありますか。

  幼いころに周りから、人との違いを好意的に捉えてもらえる環境だったからか、自分の人生も“人との違い”を楽しんでいる節は否めません。私の家族は医学部出身が多いなか、医師にならずに農学部を選んだのも、大学院を選ぶときに、あえて新しい環境の東京大学に決めたのも、どこか人との違いを求めていたと思います。

人脈ゼロ、知識ゼロ。手探りで起業した大学時代

ジーンクエスト高橋祥子さん

―2013年、東京大学の博士課程在籍中に起業されましたよね。そのきっかけは何ですか?

  大学院2年目の始めのころに起業をしたのですが、卒業するまでまだ2年もありましたから、卒業してから起業するのを待てませんでした。今このタイミングで遺伝子解析事業を始めなければと自分の気持ちが強くなった時期でもあり、日本で最初にこのサービスを展開するためにも、まだ他社の参入がなかった社会的なタイミングでもありました。

―起業する時に苦労したことは何ですか?

  一度も就職せず社会のことを知らずに起業したので、何もかもが苦労でした。業者さんとやりとりするのも一苦労、ビジネスマナーもよくわからず、WEBサービスや事業の作り方、営業の仕方も何も知らない状態でした。そのため、本と人からたくさん勉強をしましたし、直接自分の失敗経験から学びました。

  人脈もゼロだったので、自分から経営者の講演に行って、その後に名刺を持って無理矢理に突撃してみたり、1人で学会に参加して知見の豊富な大学教授に相談をしに行ったりしました。その場の受け答えだけで流されてしまう場合も多かったのですが、なかには親身に相談に乗ってくださる方もいました。たくさんの方々に支えていただいたことで、何とか事業を立ち上げることができました。

―大学院生で起業をすることに不安はなかったのですか。

  もともと大学院生の立場だったので、たとえ会社が失敗しても学生に戻るだけでした。だから思い切って飛び込むという感覚もなく、できるところまでやろうとすぐに行動しました。さすがに、取引先が決まったり社員が増えたり関係者をたくさん巻き込むようになってからは簡単に後戻りはできませんが、起業のときに不安はありませんでした。

―研究と起業の両立で大変だったことはありますか?

  自分の罪悪感との闘いが大変でした。本来、博士課程の研究は、研究に人生の全力をかけている人達がいるところです。自分の研究を四六時中、必死で取り組むのが当然で、さらに後輩の指導や研究費調達など研究室の業務も中心的にやるべきと思っていました。

  けれども私は起業してから次第に時間が取れなくなっていきました。同時に、起業についても中途半端な気持ちで進むべきことではないと認識をしていました。自分で決めたことだったので、2つとも結果を出したかったんです。

  でも、両方の成果を出せていないということは、どちらも全力で取り組めていない証拠です。この中途半端な状況に陥って、どちらにも迷惑をかけているだけなのではないか、と思いました。会社にいるときには研究への罪悪感、研究室にいるときには会社への罪悪感と葛藤していました。

  大学を辞めるのが正しいのか、辞めるのが現状からの逃げなのか悩みました。しんどくて昨年の春から夏にかけてしばらく研究室を休ませてもらった経緯があります。その時間があったからこそ、“両方ともがんばること”が前進する最善策だと開き直ることができました。つまり、自分の選択を信じることに腹落ちしました。

  研究や仕事に当てている時間配分を、。“自分が信じていない”から罪悪感になるのだと気づいたんです。自分のことを心の底から信じ切るようになった途端、集中力が一気に高まり悩むこともなくなりました。

  その具体例が博士課程の論文です。通常、博士論文の執筆には2~3か月ほどかけると思いますが、2週間で完成させることを決めました。
  達成のためには全力で集中する必要がありました。2週間分の博士論文プロジェクトを分刻みで作り、スケジュールをあらかじめ教授や先輩方に渡しました。計画表を共有して、「この日にこの章を提出するので添削をお願いします」と事前告知しました。朝から夜までは会社、だいたい20時から翌朝4時まで研究室にいる2週間でした。
  研究室や会社の皆さんの理解と協力があったおかげで、なんとか予定通り2週間で終わらせ、無事博士課程を修了することができました。

紹介が紹介を呼び、広がった縁。もとは自分の行動から始まった

ジーンクエスト起業について高橋祥子さん

―2013年に起業されて約2年。あらためてふり返ってみて、どのような2年間でしたか?

  あっという間でした。2015年3月に大学は卒業したのですが、会社がここまで成長したのも本当にたくさんの方々のおかげです。起業を考えていたころ、相談にのってもらっていた経営者に「やる気は感じるけれども、プレゼン能力が足りない」と指摘されたことがあります。

  プレゼン能力を身につけるために、その方から紹介された学生向けのプレゼン講座を受講しました。プレゼン大会に出場した時、審査員として来られていた経営者と知り会うことができ、その方々から「世の中のスピードは速いから、自分で方向性を立てて進むべき」とか「生きる力をつけないといけない」と、今も大事にしている考え方を教わったのです。

  人の紹介が紹介を呼び、広がっていったご縁だったのですが、もとは最初の経営者に自分が話かけたことが始まりです。自分が行動したからこそ様々な方と出会え、意見をもらい、視点が広がりました。もし話かけていなかったら、出会わなかったかもしれない。そう思うと行動に移してきたから、いろいろな方々に支えてもらうことができ、自分の道が開けてきたのだと実感します。

―仕事をするうえで大事にしていることはありますか?

  なんで起業したのか、その時の気持ちを忘れないようにしてます。仕事でうまく行かないことがあったり、落ち込んだり立て込んでいるときに、必ず起業時のワクワク感や好奇心を意識的に引き出すようにしています。

  自分が研究と、この事業が好きだから、自分の好きでやってるのだと思えば、だいたいのことは「こんな壁は何の障壁にもならないはずだ、こんなところで落ち込んでる場合じゃない」と思うことができます。

―高橋さんが目指すビジョンは何ですか。

  ゲノム情報を適切に活用できる基盤を創りたいです。その先には、医療にも人々の生活にも社会にも必ず貢献すると確信しているからです。そのためにも、今は遺伝子解析サービスを広げていきたいと思っていますし、そこで得た情報や課題をもとに研究を加速させていきたいと考えています。

働き方も多様化。だから“生きる力”をつけていく

ジーンクエスト社内にて高橋祥子代表取締役

―学生時代から研究と仕事に注力されていますが、アルバイトはしていましたか。

  京都大学にいた時はフィギュアスケート部だった経験を活かしてフィギュアスケートのインストラクターのアルバイトをしたり、飲食店やパン屋さんでも働きました。今までに経験していないことをやりたくて選んでいましたね。私は就職をせずに起業したので、今思うとアルバイトが接客や敬語、マナーを学ぶ場であり、社会の接点でした。

―博士課程で起業された高橋さんから、これから社会人になろうとする学生にアドバイスをいただけますか。

  私のように何も経験なくいきなり起業しない方がいいと思います、大変なので(笑)。もちろん挑戦することはとても素晴らしいことだと思いますが、就職するにせよ起業するにせよ、自分に生きる力がないと自分も周りも大変な苦労をします。

  就職できればとりあえず安心だとか、会社に守ってもらおうとか、恋人や親に何とかしてもらおうとか、自分以外の人に依存するような受け身では、今後流れが速い社会では食べていけない時代になります。積極的にいろいろな経験をして“生きる力”をつけてほしいと思います。

―“生きる力”とは具体的にどのようなことですか。

  会社のなかという狭い世界ではなく、市場で求められる人材になることです。たとえば博士課程を出る人の多くはアカデミックなポストを就職先に希望するようですが、昔と違って大学院生の数は増えているけれどもポストは少ないのが現状です。大学で学んだことをそのまま活かせる人の割合は確実に減ります。つまり博士号取得者の働き方は、必ず多様化せざるを得ないということです。

  現代社会は働き方も様々で、企業の存続も永久に保障されているわけではないので、多様化している現実を受け入れて、広い視点で就職活動をするようおすすめしたいです。

  そのためにも、「自分が何をしたいのか」という自分目線から「自分が何の価値を社会に提供できるのか」という市場目線に見方をスライドさせる必要があると思っています。私は就職という道を結果的に選びませんでしたが、起業時に研究職以外の方と接点がありました。付き合う人が変わったことによって、視野が広がりました。

  私が相談にのってもらっていた方々は、学生の自分より年上で職業や学歴も様々。市場目線での話をたくさん聞く機会がありました。当時の経験があったからこそ、今もその目線で仕事をしています。

  私はまだまだ社会人としてこれから力をつけていく時期ではありますが、ぜひ皆さんも市場に求められる人材になってほしい。そのためにも“生きる力”がつく経験を増やしていただければと思います。

Genequest高橋祥子代表取締役社長 <株式会社ジーンクエスト>
〒141-0022 東京都品川区東五反田5-22-37 オフィスサークル N 五反田5F
JR、都営浅草線 五反田駅より徒歩約3分

[取材・執筆・構成]yukiko(色彩総合プロデュース「スタイル プロモーション」代表)
[撮影(インタビュー写真)] 真田明日美

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