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「優秀な人間は起業かベンチャーだ」――元サイバーエージェント大下氏がミイル代表となるまで

ミイル株式会社 大下徹朗
大下 徹朗(おおした  てつろう)
ミイル株式会社 代表取締役

1976年福岡県生まれ、慶應義塾大学卒業。2000年、株式会社サイバーエージェント入社、インターネット広告事業本部配属。2005年に営業部門の、2008年にはメディア部門の統括を任される。2010年、株式会社サイバーエージェント・ベンチャーズへ転籍し、取締役に就任。休養期間を経て、2014年「食」に特化した写真投稿型サイト『ミイル』を運営するミイル株式会社(本社最寄り:渋谷)の代表取締役に就任。


※本文内の対象者の役職はすべて取材当初のものとなります。

「食」がもたらすコミュニケーション。その活性化を目指す『ミイル』

ミイル株式会社 代表取締役 大下徹朗さん

―まずはミイルの事業内容と『ミイル』の特徴についてご説明をお願いします。

  『ミイル』は自分のつくった手料理やお店の料理の写真を記録したり共有する「食」に特化したサービスです。写真を見て楽しむのはもちろん、毎日の食の記録として使ったり、コメントやlikeボタン(「食べたい!ボタン」)のアクションから、投稿者同士交流ができるSNSとしてもご利用いただいております。

  弊社で独自に開発したフィルター機能があり、偽りのない範囲でおいしそうに料理の写真を加工することができるのも、大きな特徴のひとつとなっています。

  自社調べですが、数ある写真投稿サービスでも「食」に特化したものでは世界初、日本での「食」の写真投稿型サービスとしては最多の投稿数を保有しています。これまでに1,000万枚以上の投稿があり、「食べたい!ボタン」の押下回数は2億回を突破しました。

―どのような人が『ミイル』を使っていますか?

  ユーザーのうち40%が1日1時間以上、5%が2時間以上『ミイル』を利用しています。ほとんどが25歳以上の女性で、うち60%が既婚者。一番起動率が高い時間帯は夜10時。ディナータイムのあとの余暇時間が多いですね。

  『ミイル』はいわゆるレシピサイトさんや飲食店検索サイトさんのように「さがしもの」をするためではなく、ゆっくりと “余暇時間を楽しむ場所”としての位置づけになっています。

―ユーザーからは、どのような反応がありますか?

  「おいしそうな写真を見ているだけで楽しい」「刺激を受ける」「料理はつらい家事だったが『ミイル』を使い始めてから楽しくなった」という声をいただいております。『ミイル』ユーザー同士でつながった人は「ミル友」と呼ばれていますが、ミル友同士で交流が深まり、オフ会が開かれたりしていますね。

  また、決して食べ物の話題だけじゃないのもおもしろいなって思います。写真を投稿するとともに「今日は子どもの運動会だ!」とか「昨日は忙しかったな~」とつぶやくんです。写真を介して、みんなで食卓を共有して会話を楽しむようなイメージで利用されているんですね。

―今後、どのようなサービス展開を考えていますか?

  1,000万枚の投稿があるということは、1,000万件分のビッグデータが蓄積しているということになります。お店や料理に関するビッグデータを使った、弊社でしかできないサービスも提供したいと考えています。

  弊社のミッションは“食のコミュニケーションを通じ、人々に、幸せになる力を与えること”。 食を起点にしたコミュニケーションは人に活力を与えますし、そうしたいと思っている人がどんどん増えています。そういう人たちにとって、居心地のいい場所を提供していきたいですね。

何でもチャレンジし、心身を鍛えた学生時代

ミイル大下徹朗社長

―大下さんのお生まれは福岡県になるんですよね。

  そうです。父親が転勤族で、福岡、大阪から関東と、どんどん東に移ってきました。神奈川が一番長かったですね。それから仕事のために、また東京に出てきて。今は東京に住んでいます。

―学生時代はどのように過ごしましたか?

  大学ではマーケティングのゼミに入っていて、勉強と一緒にスポーツもがんばっていました。小学校の時からずっと体を鍛えていまして。

  幼少期は水泳、小学校の時はサッカーで、中学時代はバレーボール。高校に入ってアメフト部。高校2年の時からアメリカに1年間留学し、帰国して大学時代にはウィンドサーフィン……と、結構体をいじめていました(笑)。でもおかげで風邪を引いても長引かない、強い体になりましたね。

―いろんな種類のスポーツをたくさんこなしていたのですね。マリンスポーツもお好きなのですか?

  中学生から神奈川県の茅ヶ崎市民でしたから、海のスポーツに触れるのは地元民の宿命です。

  いずれアメリカに留学するのが決まっていたので、アメフトはアメリカを意識してやり始めました。でも……留学先にアメフト部がなかったんですよ。これは誤算でしたね(笑)。向こうではバスケと、陸上短距離をやっていました。

―どこでも、何でも挑戦されたんですね! アルバイトはどんなことをしていましたか?

  大学生の時は居酒屋で働きました。あと、留学から帰ってきたばかりのころは、知人から1歳のお子さんのベビーシッター兼英語の先生を頼まれまして。世話をしながら、あやしながら、泣いている赤ちゃんにずっと英語で話しかけていましたね。その子が猫を見て「cat!」って言ったよという話をあとで聞いたときは嬉しかったです(笑)。

―留学にはどういった目的で行って、どのような経験をしましたか?

  留学は両親の勧めでした。アメリカの会社の日本法人に父親が勤めていたんですが、福利厚生のようなもので、アメリカ本社の社員の家にホームステイできるような制度があって。

  アメリカの学校の授業には「講義型」と「ディスカッション型」がありました。英語に慣れるまで自分より1学年下のクラスに入れてもらいましたが、「ディスカッション型」の授業で、自分より年下の子たちが自分の意見をバンバン言っているのを見て、衝撃を受けまして……。「欧米では自分の意見をハッキリ言う」とは聞いていましたが想像以上。実際にそんな文化を浴びて、いい経験になりましたね。

  18歳の時に帰国してきて思ったのが、「日本人って下を向いている人が多いな」ということ。向こうでは顔を上げて積極的に話していたのを見ていただけに、印象的でしたね。

胸に刺さった恩師の言葉が、ベンチャーと関わりを持つきっかけに

ミイル大下社長、学生時代を語る

―就職活動はどのようなことを意識していましたか?

  私の年代がちょうど就職活動に関する価値観の転換期でした。どういうことかというと、私より1個上の世代までは大企業志向で、ゼミの先生もそれを推薦していたんですが、私たちの代から言うことが変わったんですよ。

  「自分が優秀な人間だと思うなら、大企業で安定した職を望むより、起業するか、ベンチャーで働け・挑戦しろ」。「1番優秀な人間は起業するんだ。今してもいい。2番目に優秀な人間はベンチャーで働くんだ」と。

  ちょっと毒舌な先生でしたが、その言葉が当時の自分にものすごく響いたんです。ベンチャー企業で働こうと考えました。なので、就職活動は基本的にベンチャーばかりを受けていましたね。

  そうしたなかで、インターネットやマーケティングのような単語でネット検索をしていたら、サイバーエージェント社長の藤田晋(ふじた すすむ)さんのブログを見つけました。「この人の会社、おもしろそうだな」って思って、そこで働きたいと思ったんです。

  そして、新卒入社1期生として入社することになりました。サイバーエージェントグループには内定者アルバイト時代含め、約14年ほど勤めました。

―サイバーエージェントには、かなり長い間、務めておられましたね。

  最初から広告事業部門にいて、その統括までさせていただきました。……でもふと見渡すと、部門内で私以上の長いキャリアの人たちがほぼいなくなっていましたね。

  サイバーエージェントグループは様々な事業ポートフォリオを持つ会社です。「あの部門、あのグループ会社、興味あるぞ……こんなことやりたいぞ……」みたいな思いはみんな持っていると思いますが、なかでも自分がまぶしく憧れに思っていたのがベンチャーキャピタリスト……今のサイバーエージェント・ベンチャーズ社でした。

  その代表の方から「こちらに来ないか」というお話しがありまして。ビジネスの総合格闘技だと思っていた投資の仕事、喜んでお受けしました。

衰弱した体が、食事療法で復活! ミイルへの入社を心に固める

ミイル社長大下徹朗氏のサイバーエージェント時代

―実際にベンチャーキャピタリスト(以下、VC)になってみて、いかがでしたか?

  若かりしころ、ゼミの先生に言われた「起業する人間が一番!」という言葉がずっと記憶にあるなか起業家の方々と真剣勝負をする仕事ですので、非常に身が引き締まる想いでした。

  「サイバーエージェント・ベンチャーズ社の取締役」という名刺は持っておりましたが、人生を賭している起業家の方々から見たら私なんて普通の人です。何が何でも出資をしたい会社が出資を受けつけてくれなかったり、逆もあったり。投資の仕事は広告の仕事よりも短い期間でしたが、自分の実力の無さを痛感しながら何度も徹夜をし、もがいていました(笑)。

  審査するだけのベンチャーキャピタルって意味が無いよね、という考えのもと、意気投合した起業家の方と一緒に考える(考えなおす)ということもやっていました。

  起業というものは生半可なものじゃない。世の中を変えてやろうと人生を賭けている人たちと、どう接していくか。どう、お互いの存在を不可欠なものにするのか。それらを非常に学べた時期でしたね。ウン十億円の広告ビジネスも大好きな仕事ですが、出資は人生や世の中に関わる仕事でもあります。とても責任の大きな仕事でした。

―VCとして大下さんが担当された会社のなかにミイルがあったわけですね。ミイルの、どのあたりに可能性を感じたのですか?

  衣食住は誰にでも関係することですし、そのなかでも「食」は最も人の命に近いものです。そこを起点にしていること、簡単であること、そして楽しめること、です。

  ミイルに投資した2011年当時、スマートフォンはすでに世の中に浸透していましたけれど、レストランで食事をして写真を撮る、という文化はまだそこまで広まってなかったんですね。でも必ず、これから定着していくだろうと読んでいました。

  日々の手料理を作る方々にもスマホが浸透したらさらに多くの人に定着する。チームが素晴らしいことはもちろん、時代や風習の変化が予測しやすかった点も投資する判断の決め手となりましたね。

―2014年に、代表取締役としてミイルに入社されました。その経緯をお聞かせください。

  末期ガンを患った母の介護等の理由で会社を辞める決断をしました。母親を失った時の私は仕事に就いていない状態で、弱り果てて、体調がめちゃくちゃになってしまいました。

  そんな時に友人から腸内環境の改善をテーマにした本を貸してもらったんです。その本をもとに食生活を変えたら、あっという間に元気になって。「食事ってすごいな!」と実感したんです。

  もちろん自身は『ミイル』のユーザーでしたが、そんな思いも重ねて『ミイル』を起動してみました。見てみると、食を起点にしたコミュニケーションでハッピーになっている人が多かった。こういう人を、どんどん増やしていきたい。そして働くなら、大好きなベンチャー企業……ミイルで働きたい、と強く思いました。

  そこからミイル社の幹部との接点を持ち、ご縁があって代表としてジョインすることになりました。
  「ハッピーな人を増やしていくんだ。投資をするという立場から、この成長過程のベンチャーを率いて成長を実現する当事者に、自分がなるんだ」
  ……そう思うと、目の前が開けたような想いでしたね。

  私はもちろん「起業家」ではないのですが、そこへ1センチだけ近づけたような……なんだかスカっとした気持ちだったことを、今でも覚えています。

成長したいなら、働きたい人と一緒に、がむしゃらに走りぬこう!

ミイル大下徹朗さん

―仕事をしていてつらいことも多いと思いますが、大下さんなりの、仕事に対する「モチベーションの保ち方」はありますか?

  私は、そもそも“モチベーションは上下するものではない”と思うようにしているんです。「今、モチベーションが下がっているな」と考えてしまうと「だからできないんだ」という甘えにつながってしまう。

  経営者なら、どんな時でも常に冷静な判断ができるようにしておかなければなりません。だから調子がよくても「次はダメになってしまうかもしれない」と考えるようにしています。

  仕事がつらい時もありますが、そこでモチベーションを保っていられるかどうかよりも、いかに最大限のパフォーマンスを出せるか、を念頭に置いています。そのせいか、人に「(感情の起伏がなくて)サイボーグみたい」って言われたことがありましたけど(笑)。

―(笑)でも、とても大切なことですよね。
それでは、これから社会人となる人、または仕事について悩んでいる若い人へ、メッセージをいただけますか?

  私の実体験でいうと「この人と仕事がしたい!」という直感が大事だと思っています。まず若い人が社会に出たら、最初に出会うのは直属の上司ですよね。しかもその人にとっては上司=会社という世界になるわけです。

  大企業の場合、上司は選べません。ですので是非、ある程度上司を選べる、あるいは一緒に働きたいと思える人が近くにいる、ベンチャー企業への就職をオススメしたいと思っています。

  それと、これもお話ししたゼミの先生の言葉の受け売りになりますが……自分のなかで今すぐ解決したい社会的な問題があるのなら、すぐに動き出すべきでしょう。すでにその解決に向けて動いている会社があるならそこに入社すればいいし、それがないなら、自分からチームをつくって行動を起こすことも、選択肢に入れてほしい。とにかく、若いうちは悩んでいるヒマなんてありません。

  私がベンチャー企業で社員として働いていた時、会社は自分が思う以上に、はるか先の目標に向かってものすごい速さで進んでいましたから、なんとかそれに追いつこうと必死になっていました。悩むヒマなんてなかったんです。でも、そこでようやくひと段落ついて振り返ると、自分が確かに成長していると感じられたんですよ。

  だから自分を成長させたいなら、自分よりも先へ向かっている組織の中に身を置くこと。そうしたら、きっと悩まなくなります。

  成長スピードに速いところで、がむしゃらにやる。それが大事じゃないかな、と思います。

<ミイル株式会社>
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前6丁目19-14 神宮前ハッピービル8階
JR渋谷駅より徒歩約10分

[取材・執筆・構成・撮影]真田明日美

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