社会の役に立つ “旅人” を増やしたい、『SAGOJO』代表の展望
- 新 拓也(Takuya Shin)
- 株式会社SAGOJO 代表取締役
1987年生まれ、愛知県知立市出身。2010年、立教大学経営学部国際経営学科を卒業。2010~12年に専門商社で南米やアフリカなどからレアメタルの調達業務を行う。在職中の2012年から “旅×人×ストーリー” をテーマに掲げたWebマガジン『Travelers Box』を立ち上げる。2014年、株式会社LIGに編集者として入社。企業のオウンドメディア運営やコンテンツ制作を経て、2015年12月に “すごい旅人” 求人サイト『SAGOJO(サゴジョー)』を企画・運営する株式会社 SAGOJOを創業する。
株式会社SAGOJO
[創立]2015年12月
[所在地]東京都渋谷区桜丘町30-4 渋谷アジアマンション202
[アクセス]各線 渋谷駅から徒歩6分
※内容はすべて取材当時のものとなります。
新聞社の記者契約を終えようとしていた2015年11月、筆者ツイッターアカウントのタイムラインに飛び込んできた投稿がありました。
世界を旅をしながら「シゴト」をすることができる新たな仕組み『SAGOJO(サゴジョー)』。そのティザーサイトを本日オープンしました!!
— SAGOJO(サゴジョー) (@sagojo_travel) 2015年11月8日
すごい旅人求人サイト『SAGOJO(サゴジョー)』https://t.co/mG6JvixBf3 pic.twitter.com/rAVFTf0BXv
旅先でコンテンツ制作の「シゴト」をすることで、企業から「リターン」を受け取りながら世界を旅してみませんか? 文章・写真・動画・イラストなどなど……あなたの「好き」「得意」を発揮して、キャリアに繋がる旅をしよう!! https://t.co/mG6JvixBf3
— SAGOJO(サゴジョー) (@sagojo_travel) 2015年11月8日
年が明けたら職なし、という人生のターニングポイントに “渡りに船” だったこのツイート。
旅先で取材をしながらライティングや撮影をすることが収入源になる、ですって!?
記者時代、出張ついでに日本全国を訪ね歩いた経験が活かせるかもしれない――。
ひょっとしたら海外でリモートワークができたりして?
好奇心がかき立てられ、アドレナリンが分泌したのを、昨日のことのように覚えています。
次の瞬間には迷わずティザーサイトへ登録。
その時から、今回ご登場いただく『SAGOJO』代表・新拓也さんとのご縁が始まりました。
フリーランスの編集者・ライターとして活動していた時期に、よくご依頼いただくようになったのです。
課題を抱えた企業や自治体と、スキルのある “旅人” をマッチングする求人プラットフォーム『SAGOJO』。
旅を続けながら仕事をして収入を得ることができる、旅好きにうれしい仕組みを整えた新さんの頭のなか、のぞかせてもらいました!
『SAGOJO』で旅の社会的価値を高め、気軽に海外へ行ける世の中に
――仕事を恵んでくださった恩人の新さんにこうしてお目にかかると照れてしまいますね(笑)。改めて “すごい旅人” 求人サイト『SAGOJO』のビジネスモデルをご紹介いただけますか?
よろしくお願いします(笑)!
『SAGOJO』では、「観光客に向けてPRしたい」「海外進出の調査をしたい」といったニーズを抱えているクライアント企業や自治体とスキルのある “旅人” をマッチングして、旅人がクライアントの課題を解決する仕組みをつくっています。
僕らは主に、
①求人プラットフォーム『SAGOJO』における旅人の募集
②クライアントと旅人のマッチング
③旅人による成果物のクオリティ管理
の3フェーズを経てクライアントからフィーをいただき、その一部を旅人に還元しています。
――クライアントからはどのような依頼を多くいただくのでしょうか?
今のところご要望として多いのは、記事執筆や写真撮影といったコンテンツ制作の依頼です。
例えばクライアントから指定のあった土地へ旅を兼ねて取材に出向いてもらい、その結果をレポート記事や写真・動画といった成果物にまとめて納品してもらう。
過去に出た旅の経験を活かせるようなコンテンツであれば、取材の生じないコラム記事の案件もありますね。
今はご依頼の80%くらいがコンテンツ制作です。
なかでも90%が記事執筆、10%が動画制作といったイメージでしょうか。
――案件の一例を教えていただけますか?
京都市観光協会から、京都市の魅力を伝えるWebメディア『kyotopi』のコンテンツ制作を一部任せていただきました。
観光客の多い京都も、盛り上がっているのは街の中心部ばかり。
市街地から少し外れると、あまり人が来ていないエリアがあるという課題がありました。
観光協会としては、京都の奥にも観光客が訪れるような仕組みをつくりたいとのことで、『SAGOJO』と一緒に “奥京都” にある観光施設をPRするメニューをつくろうという話に。
最初の事例として、世界遺産・下鴨神社の南にある旧三井家下鴨別邸がピックアップされました。
――どんなPRをしたんでしょうか?
“旅人” として登録のあったライターさんに取材していただき、記事で魅力を発信しました。
同時に、“旅人” のインスタグラマーにもSNSでのシェアを行ってもらって。
結果、記事はFacebookで540を超える「いいね」を、Instagramの投稿では2,200強の「いいね」をコスパ高く記録することができました。
――自治体ともお付き合いがあるんですね。『SAGOJO』を指名してくださった理由はどんな点にあると考えていますか?
『Kyotopi』の読者には旅行好きの方が多いので、弊社が “旅人” 目線でコンテンツをつくれたことがいちばん大きいのではないかと思います。
地元の人や観光協会の方には書けない “ソトモノ” の視点や切り口から魅力を紹介できるのが『SAGOJO』の強みですね。
――なるほど。一般企業のクライアントからはどのような反応があるんでしょうか?
「現地を実際に訪れるからこそ一次情報やオリジナルの素材を使うことができ、成果物のクオリティが高い」
「“好き” を仕事にしているだけあって、成果物から熱量の大きさを感じる」
といったお言葉をいただいています。
――コンテンツ制作以外に請け負っている案件には、どのようなものがありますか?
最近はテストマーケティングのようなイメージで、営業代行やリサーチの案件もいただくんですよ。
マンガコンテンツを抱えるベンチャー企業の海外進出支援を “旅人” が担ったケースがありました。
海外でもマンガのPRが受け入れられるのか、実際にアメリカを訪れてもらったんです。
現地のイラストレーターやクライアント候補の企業にヒアリングして、その感想をレポートにまとめたり。
海外進出をする前に行う現地調査や視察にはコストがかかるといわれています。
それでも「やってはみたけどイメージと違う」などと実現にいたらず、あとに何も残らないこともあるらしく。
だったらまず『SAGOJO』に登録していて、もともと海外に滞在している “旅人” にプロダクトを売ってもらう。
さまざまな国であたってみて、「反応がよかったこの地域で視察を組んでみては?」とご提案しています。
――本格的な視察の、前段階のリサーチということでしょうか?
はい。
海外進出支援における既存のファーストステップより “手前” の段階をつくることができたら、もっといろんな企業や人材が気軽に海外をターゲットにできるのではないかと考えています。
これも弊社の “旅人” がいるからできること。
彼らがいるからこそ、今の世のなかにないものを生み出せると信じているんです。
――『SAGOJO』を通じて、世の中にどのような影響やメリットを与えたいと考えていますか?
いちばん根っこにあるのは「旅する人を増やしたい」という思いですね。
旅の魅力をどんどん発信して、気持ちをかき立てるというのもひとつの手段だと思うんですが、僕らはもう一歩先の「旅の社会的価値を上げる」というアプローチで旅行者を増やせたら、と思っていて。
――「旅の社会的価値を上げる」って?
日本では “旅行=娯楽・レジャー” で、時間もお金も消費して楽しむ行為という受け取られ方をしている気がします。
「仕事を辞めて世界一周したい」と周りに伝えると、「甘い」と言われたり。
……実際に僕が言われたんですけど(笑)。
――そうなんですか?
新卒で入社した会社を辞めて、1年くらいフラフラしている時期があったんです。
その時に「インドへ行く」と伝えたら、仕事もロクにしていなかったこともあって「甘いこと言ってんじゃないよ」って。
旅に出ることって、社会からはみ出すことなんだ……と痛感しましたね。
――嗜好品、みたいな?
そうですね。
世界一周から帰ってきた人って、再就職が難しいケースがあって。
履歴書では空白期間になってしまう。
そうした社会の認識を変えることができたら、もっと旅に出る人が増えるんじゃないかと思っていて。
旅することは社会の役に立つ、自己満足だけではない価値を生み出す行為だということを証明したいんです。
そのためには旅の魅力を発信するだけでは足りないと思っています。
魅力を伝えるだけでは、旅好きにしか届かないんですよね。
そういった志向ではない人たちにも魅力を感じてもらうためには、旅を選ばない人たちの言語で、価値があることを証明しなければなりません。
そこで考えたのが、旅自体が仕事になって価値を生み出せないかなぁ……ということ。
旅行者のキャリアアップや収入源につながる仕組みをつくれたらいいなと思って事業化したのが、 “すごい旅人” 求人サイト『SAGOJO』でした。
サッカー以外のアイデンティティを模索した結果、旅にたどり着く
――次に『SAGOJO』にいたる新さんのキャリアについて教えてください。学生時代に力を注いでいたことは何ですか?
とにかくサッカーばかりやっていました。
全国大会を目指している、愛知県の刈谷高に進学して。
僕が在学していたころの刈高サッカー部は「古豪」と呼ばれていて、7年ほど全国に行ってなかったんです。
だから「今年こそ出場しようぜ!」とみんなでがんばっていました。
――全国大会へ行けたんですか?
3年の時(※)に。
まわりにめちゃくちゃうまい奴らが集まっていたんですよね。
僕はMFだったんですけど、レギュラーではありませんでした。
でも成功体験を得られた実感があるんですよ。
(※)2005年の「全国高等学校総合体育大会」を指す。このほか刈谷高サッカー部は過去に「全国高校サッカー選手権大会」へ19回出場し、そのうち2回は準優勝している。
――どんな成功体験だったんですか?
チームが勝つために、できることを考えて自走できる仲間に恵まれました。
互いに切磋琢磨しながらレギュラーを目指して。
この時のメンバーは今でも大切な仲間です。
当時は全国大会に出場して1勝するのが目標でした。
結果は、1回戦で福島工業に勝って2回戦で青森山田に敗北。
最終的には負けてしまったけど、当初の目標は達成できた。
「努力したら結果がついてくる」と実感できる出来事だったんです。
――大学で夢中になっていたことは?
やっぱりサッカーなんですよね(笑)。
アルバイトでは、コナミスポーツクラブが提供している「アクションサッカー」という競技で、お客さんと一緒にプレーしたり、審判をしたりしていました。
でも高校の時からずっとサッカーをやってきたからこそ、大学でやっと「旅」に出会えた気がしてるんです。
――先ほどから「旅」がなかなか出てこないと思っていました(笑)。どういうことですか?
サッカー以外の世界を見てみたいと思ったんですよね。
大学4年の、ちょうど就活が終わったタイミングでした。
当時は友達もアルバイトもサッカー一色。
それでも大学で多様な友人に出会って、もっといろんな人とコミュニケーションを取ってみたいと感じるようになりました。
サッカー以外のアイデンティティがどこにあるか、新しく知り合った人との会話を通じてもっと知ってみたかったんです。
今まで自分が生きてきた環境とまったく違う世界に生きている人とも会って話したい。
その時、自分が何を感じるのか知りたい。
それで、「よし、旅に出よう」って。
――そんな新青年は、どこへ向かったんでしょう?
東南アジアとインドを5ヵ月かけて周りました。
特に「インドの旅は大変」と聞いていたので、「自分を変えるにはなおさら行かねば」とすごく気負って向かった記憶があります(笑)。
――若い!(笑)。それまではどのような海外経験を?
家族旅行では何度かありましたが、海外に一人で行くのは初めてでした。
目立ちたい願望も手伝って、あたかもすごいことをするかのように友人たちに語っていましたね(笑)。
――一念発起の旅で、転機になるような出来事はありましたか?
いろんな刺激を受けましたが、とにかく「自分はめちゃくちゃ恵まれている」ということを実感しました。
――具体的なエピソードを教えてください。
旅先で「日本から来た」と伝えると、現地の人が土地を案内してくれて。
何か恩返しがしたいと思って「次にあなたが来日したら案内するね」と伝えた時に、「オレは行けないよ。世界を自由に旅できるキミがうらやましい」と言われたことがありました。
それがかなりショックで。
こうして旅に出られたのは自分が優れているからではない。
日本でわりと真面目な両親のもとに生まれた自分の境遇がラッキーなだけ。
そう思うと、自分がただ気ままに旅していることに違和感があって。
でもこの違いを歯がゆく感じる一方で、置かれた環境にしっかり感謝しながら、自分にできることを通じて世界に還元していこうと考えました。
「恵まれた環境に生まれてよかった」で済ませるのではなく、だからこそできることはないのか。苦しんでいる誰かを救えるのでは。
上から目線からもしれませんが、「自分にできる何か」について考えるきっかけになった出来事でした。
――社会に出る前に経験できたのはよいタイミングでしたね。
はい。ただ就活の前だったら、全く異なった企業選びをしていただろうなとも思うんです。
――えっ、その心は?
帰国してすぐ、内定をもらっていた企業で働き始めたのですが、いわゆる大企業のカルチャーに「なにクソ!」と思うことが多くて(笑)。
――旅の洗礼を受けた新さんにとって、すでに内定先はミスマッチになってしまったんでしょうか。就活ではどのような軸で企業選びをしていたんですか?
もともと海外志向があって、将来的に日本を出て活躍できそうな企業がよくて。
あとは、これを言うととても頭悪そうなんですけど、できるだけスケールの大きな仕事をしたかったんですよね(笑)。
なので商社や広告業界など、リーディングカンパニーを中心に受けていました。
――内定先の会社は、その志向を満たしてくれそうだと判断して入社を決めたんですよね?
はい。
でもとにかく堅実な社風で、特に直属の上司がカタかった。
新たな提案をしても「前例に合わせろ」としか言われないこともあり……。
あ、これはあくまで僕個人の感想ですからね!(笑)
――窮屈でした?
そうですね。
でも我慢というより、「理想の姿に近づくためにもっとよい方法はないのか」という思いの方が強かったです。
会社に「お前のやり方もいいね」と言ってもらいたくて、ひたすら動いていました。
――「お前のやり方」って?
例えば休日のために平日をがんばって働くんじゃなくて、仕事とプライベートの境界を曖昧にしたらいいんじゃないか、みたいなことを社内で訴えていました。
――具体的にどう訴えたんでしょう?
社会人1年目のゴールデンウィークにパキスタンを旅しました。
その時に撮影した写真の展覧会を開くにあたって、社内でもPR活動をしてたんですよ。
そうしたら「会社を私物化するな」と怒られました(笑)。
「“課外” 活動は個人でやれ」と。
――公私を分ける社風だったんですね。
はい。応援してくれる人もいて、広報のメールマガジンでグループ企業各社に写真展の情報を流してくださるような方もいたんですけどね。
その方は僕に何も言わなかったけど、会社からさぞかし怒られたんだろうなぁ(笑)。
――そんな会社員生活を送るなか、旅の魅力を発信するメディア『Travelers Box』を立ち上げられます。
“旅×人×ストーリー”という3つのキーワードを掲げて、主にインタビュー記事を更新していました。
旅人がどのような経験を通じて何を学んだのかを、具体的なエピソードを交えながら物語る。
彼らの得た気づきを、その理由とともに読者に届けたい一心で配信していましたね。
――インタビュー記事という見せ方には、何か狙いがあるんでしょうか?
当時から、インターネット上に「旅で学べる10のこと」みたいなまとめ記事はありました。
書かれている内容は正しいと思うんですけど、旅の経験が少ない読者にとっては心の底から実感できないだろうなと感じたんです。
そこで選んだのが、実際にリアルな現場を体験した旅人のインタビュー記事でした。
振り返ってみると粗い記事ばかりなんですが……イメージは旅人の “図鑑” でした。
旅に興味はあるけれど、不安で一歩を踏み出せない人たちの背中を押してあげる図鑑。
百戦錬磨の旅人から「自分も最初はこれほど不安だった」「自信なんてなかった」と言われたら、ちょっと安心しませんか?
勇気をもって一歩踏み出してみたら素晴らしい世界が待っていて、今につながっています――という事例をたくさん紹介できたらいいなと思って。
――課外活動を本格化するために新卒で入社した企業を退職されたんですね。その後はどのような活動を?
退職後、約2年半ぶりにインドへ行きました。
そこで感じたのは、やっぱり「旅」をテーマにした仕事がしたいということ。
考えるほどに『Travelers Box』を加速させたい気持ちが募りました。
それで、もっとメディアを勉強しようと思って、帰国後にLIGというWeb制作会社の門を叩いたんです。
――LIGではどのような業務に携わっていたんでしょうか?
編集者として、企業のオウンドメディア運営やコンテンツ制作をしていました。
月次で追いかけるPVなどの指標を設定して、結果を出すためにどんなコンテンツをつくるべきかというPDCAを回す感じです。
――メディアの勉強になった点もあると思いますが、LIGでの仕事を経てどのようなことを学びましたか?
Web業界の知識はもちろんですが、多様な働き方ができることを実感しました。
ベンチャーという柔軟な組織のなかで、優秀な人たちと小さなチーム単位で成果を上げる。
大企業しか知らなかった自分にはそうしたスタイルが新鮮に映りましたし、合っていると思いましたね。
将来ずっと付き合っていきたい仲間も増えました。
あと、LIGは仕事とプライベートの境界がすごく曖昧なんですよ。
『Travelers Box』に時間を使いたい僕に、LIGは “週4日” で働くことを許してくれました。
今でこそよくあるワークスタイルになっていますが、LIGにおけるこの働き方の最初の事例は僕です(笑)。
――居心地がよさそうなLIGを退職したのはどうしてですか?
在籍しながら『SAGOJO』を創業したからです。
ティザーサイトを公開したら反響がすごくあって。
自分が社長のくせに、先に会社を辞めてフルコミットしているメンバーから「新はいつからフルでやるんだ」とツッコまれていました(笑)。
だから早く『SAGOJO』に移んなきゃ、って。
――LIGにいながら『SAGOJO』のビジネスモデルを思いついたのは、どういったきっかけなのでしょうか?
きっかけは3つでしょうか。
ひとつは、LIGの仕事って旅行者を活用したらもっと広がるんじゃないかとひらめいたこと。
海外の取材記事をクライアントの領域と紐づけて企画できたらおもしろそうだな、と常々考えていて。
でも、普通にやろうと思ったら、予算が合わないなどの理由で実現することはありませんでした。
もうひとつは、『Travelers Box』のライターに外部から執筆依頼が来ていたこと。
そこからビジネスが生まれたケースもあって、ニーズがあることを実感したんです。
そして何より「旅の魅力を記事で発信しているだけではダメだ」と思い始めたこと。
編集やライティング業を中心に据えるにしても、もっと役に立つサービスを提供しないと多くの人を巻き込めないな、って。
――記事を発信するだけではどうしてダメなんでしょうか?
実際に「いいね!」と賛同してくれる人は増えて、読者もちょっとずつ増えたんですけどね。
その人が本当に旅に出ているかといったら、あまり自信がなかった。
――ただ読んで終わっちゃう?
そうなんです。
リアルな体験を読者と共有することで、納得感をもって旅の力を伝えられたらいいなと思って立ち上げた『Travelers Box』でしたが、「旅に出る」ための課題はもっと複雑で。
お金や時間、キャリアアップからの離脱……といった理由の方がクリティカルだと感じるようになっていって、それを解決できるサービスをつくりたいと考えたんです。
――それが『SAGOJO』だった?
はい!
ユーザーの旅が仕事になれば「時間がない」「お金がない」という阻害要因は解消されるんじゃないかと思うんです。
そしてこの取り組みが一般的になれば、「帰国してからの仕事はどうするの?」という議論がなくなる。
さらには「キャリアアップのために旅へ出る」くらいの世界が実現できる気がしています。
――なるほど。「旅の社会的価値を上げる」ことにつながりますね!
はい。そしてどんどん旅に出る人を増やしていきたいと思っています。
編集者コミュニティが育む『SAGOJO』のこれから
――現在、『SAGOJO』で力を入れて取り組んでいることを教えてください。
編集者のコミュニティをつくろうと思っています。
今受注している案件はコンテンツ制作が多いので、実際に執筆や撮影をする “旅人” と『SAGOJO』の間に立ってサポートしてくれる編集者同士のつながりを増やしたくて。
――コミュニティでは何を?
まず定期的に編集者会議をしたいですね。
さまざまなバックボーンを抱えた方が集まっているので、各自の編集スキルを持ち寄り、案件を超えて刺激しあってもらう。
ずっと同じ案件を1人でやっているとしんどいし、企画のネタも尽きてきますよね。
時には担当する案件を交換してみるのもいいと思うんです。
――確かに。いいですね!
僕らがいないところで編集者同士がつながって飲み会をやったりして、「今度『SAGOJO』にこんな企画を提案してみようよ」なんて流れが出てくるとおもしろそうだな、と。
その企画をクライアントに持っていって、ビジネスにするのが『SAGOJO』の役割ですね。
――Webの編集をなりわいにしている者として、とてもワクワクします! ぜひ実現させてくださいね!
ありがとうございます!
協力してくれる編集者の方を絶賛募集中ですので、興味がある方はぜひご連絡いただけたら嬉しいです。
問い合わせは、メール(info@sagojo.link)でお願いできれば!(笑)
――ほかにビジョンはありますか?
もうひとつやりたいことがありまして。
この編集者コミュニティを活用して、“旅人” のライター教育プログラムをつくりたいと考えています。
――ライター教育プログラム?
現在の『SAGOJO』には “旅人” としての登録はあるものの、活動実績が少ないためにマッチングまでいたらないユーザーがいらっしゃいます。
そういった方々の熱意をすくい上げる仕組みで、編集者がライターとしてのノウハウを無料で教えるプログラムです。
――編集者コミュニティは何をするんでしょう?
そうした “旅人” へライティングや撮影といった記事の制作スキルを教えていきます。
もちろん、編集者のみなさんには正式な仕事依頼として。
――なるほど。経験の少ない “旅人” はノウハウを学びつつ、ライターとしての活動実績をつくることができるんですね。
はい。
詳細は2月中旬(2018年)にリリース予定なので、楽しみにしていただけたら!
駆け出しのライターがステップアップしていって、最終的に「旅をシゴトに」するまでのキャリアをどんどんサポートしていけたら嬉しいです。
――実現できたら、旅を仕事にする人がますます増えそうですね。これからも応援しています!
取材・文・撮影 / 岡山朋代