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派遣社員から女性起業家へ――受付業務をIT化させたディライテッド橋本真里子

ディライテッド株式会社 橋本真里子
橋本 真里子(はしもと まりこ)
ディライテッド株式会社 代表取締役CEO

三重県鈴鹿市出身。2005年6月より派遣でトランスコスモス株式会社の受付として従事。その後、株式会社USEN、株式会社ミクシィ、GMOインターネット株式会社など大手企業にて受付リーダーとして組織運営、人材育成などを担当する。2016年1月にディライテッド株式会社を設立。受付システムの開発、受付業務のコンサルティングを行う。
株式会社トレタのオフィス受付アプリ『→Kitayon(キタヨン)』を譲受し追加開発を経て、2017年1月よりiPad無人受付システム『RECEPTIONIST(レセプショニスト)』正式版の提供を開始。“受付から内線を無くすと、来客応対はもっと快適に”をコンセプトに作られたオフィス受付サービスを展開する。

ディライテッド株式会社
創業/2016年1月21日
本社所在地/〒150-0032 東京都渋谷区鶯谷町17-10-504
最寄り駅/渋谷

※本文内の対象者の役職はすべて取材当初のものとなります。

企業の来客の取次を改善するサービス『RECEPTIONIST』(レセプショニスト)とは?

レシェプショニストiPad

―ディライテッドの事業内容と橋本さんの業務内容について教えてください。

  弊社では、iPad無人受付システム『RECEPTIONIST』(以下、レセプショニスト)のアプリを開発・提供しています。

  そのため、私は機能サービスの企画、企業への営業、運営費用の調達など、エンジニアが担当するシステム開発以外の仕事を担当しています。

―受付システム『レセプショニスト』について教えていただけますか?

  『レセプショニスト』は2017年1月にリリースした新しいiPad無人受付システムです。来客があった際に、内線電話を使わずに担当につなぐシステムとして開発しました。

―実際にどのような流れになるのですか?

  受付に内線電話の代わりにタブレットが置いてあります。そこに担当者の名前を入力すると、本人のPCやスマートフォンにチャットツールやメールを通じてお客様の来社が伝達されます。

  内線電話ではなくSlack・チャットワークなどのチャットツールを利用した受付サービスなんです。

iPad無人受付システムRECEPTIONIST(レセプショニスト)

―では、そのようなサービスを展開されているなかで、橋本さんの仕事のやりがいは何ですか?

  サービスを導入した企業から、受付(来客取次)の現場改善された話を聞くのがやりがいです。弊社では女性2名、男性5名の社員7名(2017年2月現在)でサービスを展開しています。

  『レセプショニスト』の普及や発展によって、導入して下さっている企業の来客取次が改善され、それによってさらに弊社の社員もいきいきと仕事ができたら嬉しいですね。

“受付から内線を無くすと、来客応対はもっと快適に” がコンセプト

―橋本さんは10年以上の受付業務のキャリアをお持ちですよね。そもそも“受付”とはどのような仕事ですか?

  皆さんがご存知のように、企業の受付カウンターで来客応対や担当者に取り次ぎをします。会議室までご案内したり、お茶出し、会議室の予約など社員の皆さんがスムーズに仕事ができるようサポートをするのも仕事です。

  最良の状態でお客様を社員に引き継いで、気持ちよく取引できるようにお手伝いにつながることすべてが受付の仕事です。

ディライテッド橋本真里子さん

―受付業務で必要なスキルは何でしょうか?

  華やかなイメージがありますが “裏方” なんです。数人のお茶出しやペットボトルを運ぶ力仕事もしますし、会議室の清掃もします。お客様の対応をするだけではなく、受付の仕事は社員と接するのもお仕事の1つです。

  社内外のいろいろな方に対応しないといけないので、冷静さも必要ですし、先を読んで仕事をすることが求められます。

  どんなに忙しくても雑になってはいけないので、仕事の丁寧さも重要ですね。

―来客応対以外にも、社員のために様々な仕事をしているのですね。では、その受付業務をIT化しようと思ったのはなぜですか?

  2005年から勤めたトランスコスモスの影響が大きいですね。当時はITが伸びてきたころで、会社も勢いがありました。

  そのような環境で仕事をしているうちにITに興味を持つようになりました。IT業界は変化が速く、考え方も柔軟です。社員の皆さんもそういう方が多くて、好奇心旺盛の私にも合っていた環境だったと思います。

  2007年からUSEN、ミクシィ、GMOインターネットの受付を担当して、時代はどんどんIT化していくのに、いまだ受付業務は手書きが多い点に疑問を感じるようになりました。毎日来社されるお客様は顔も名前も知っているのに来社カードを書かなければいけません。

  本来、受付とは “おもてなし” をする立場なのに、お客様に手間のかかる事をお願いしている……有人の意味や効果を考えた時に、もっと効率化できるのではないか、と。

  その分、ITでは対応できない “おもてなし” の部分に、受付担当者の仕事時間を当てたらどうか考えたんです。

  そして社員の方やお客様に受付でかかっている時間を会議の時間などに有効活用してもらえることにつながるのではないかと思いました。

iPad無人受付システム レシェプショニスト

―新しいiPad無人受付システム『レセプショニスト』を開発するいきさつを教えてください。

  『レセプショニスト』はSlack・チャットワークなどのチャットツールを利用した新しいiPad無人受付システムです。受付のリーダーとしてGMOインターネットで受付の仕事をしていた2014年くらいから1年半かけて構想を練りました。

  10年間の経験を振り返った時、受付の内線は無人でITの力を借りた方がいいのではと気づいたんです。

  それが “受付から内線を無くすと、来客応対はもっと快適に” をコンセプトに作ったオフィス受付システム『レセプショニスト』につながっています。

派遣社員から女性起業家へ……

ディライテッド代表取締役CEO 橋本真里子さん

―派遣社員から起業し、現在までの経緯を教えてください。

  2016年1月に会社を設立したのですが、当時はまだGMOインターネットに派遣社員として在籍していました。会社に許可を取って起業したんです。

  同年3月に退職するまで、自分の頭のなかにある構想を形にしてくれる仲間を探したり、資金集めのために個人投資家に会いに行ったり。

  少しでも早く『レセプショニスト』のサービスを開発・運用したかったので、それに向かって進んできました。

  2016年10月から20社ほどの企業にテスト運用をしてもらい、改良を重ねていきました。サービスとしてリリースしたのが今年1月です。

―リリースした現在は、どのような心境ですか?

  何とかここまで来たな……というのが2割、これからが本当のスタートだ……というのが8割でしょうか(笑)。

―派遣社員から起業家になる時、怖さや不安はありませんでしたか?

  ありませんでしたね。受付業務は年齢的にもいずれ限界がある仕事だと思っていましたし、もともと派遣契約だったので失うものはなかったんです。

  むしろ、自分のやりたいこと・やるべきことが自覚でき、今までの経験が活かせる仕事が見つけられたので前向きに取り組めました。

受付業務との出会いは、 “自分探し” から始まった

ディライテッド橋本真里子社長

―橋本さんが学生時代に打ち込んでいたことは何ですか?

  中学・高校の6年間、部活動でテニスをしていました。継続の大事さも学びましたし、精神力がつきましたね。

  起業をするころは特に時間の使い方や体力が勝負でしたし、今では社内のチームワークも大事なので、部活動から得たことが活きています。

―アルバイトはされていましたか?

  洋服が好きなのでアパレルで1年半ほどアルバイトをしました。店舗ではキャリアも年齢もいちばん若かったので、教えてもらう立場だったんですね。

  学生のコミュニティーとは違った社会との接点もでき、働くことの楽しさやコミュニケーションの取り方を教わりました。

  そして、私は地元や家族が大好きなので、定期的に帰郷していました(笑)。学業の合間をぬって家庭教師のアルバイトもしました。教える側にとっては “当たり前” のことでも、分からない人に説明したり伝えたりすることの難しさを体験しました。

  どちらも働くうえで通ずる部分でもあるので、学生のうちに経験できてよかったと思っています。

―では、就職活動はされていましたか?

  実は、学生時代にはやりたいことがなくて……(笑)。 “やりたいこと“ を探すために、両親との約束として1年間の期限付きで時間をもらいました。

―大学卒業後は、どのようなことをされていたのですか?

  ウエディングショーやテレアポのアルバイトをしました。いろいろと “自分探し” をしているうちに受付の仕事に興味を持つようになったんです。

  受付の仕事は、接客やマナーの知識やスキルも求められるため、働きながら自分を磨くことができます。人としての “中身” が大事だと思っていたので、やりがいがある仕事だと感じました。

  実際に仕事をしてみると、接客やマナーだけではなくて、コミュニケーション能力や状況判断力などあらゆるシーンに対応する力が必要なんです。終わりがないというか “ゴールがない” のも受付の魅力です。

起業は難しいものではない。自分の未来を切り開く “必要な要素” とは?

Delighted橋本真里子さん

―橋本さんの今後のビジョンは何ですか?

  日本は “おもてなしの国” ですから、弊社のiPad無人受付システム『レセプショニスト』を多くの方に活用してもらえるようにしたいですね。

  そして、日本は女性起業家が少ないので、もっと増えていってほしいと思っています。私は“受付” という日々の業務に向き合った結果、起業をしただけなので皆さんが思っているほど起業は特別なことではないんですよ。

―では、起業するうえで必要なものは何でしょうか?

  まずは「巻き込み力」です。1人でできることなんて限られたものです。たくさんの方の力を借りて進んで行くことにより、スピード感が増します。

  起業は社員や株主やクライアント様など多くの人とコミュニケーションを取りながら進んでいくものです。いかに多くの人を巻き込めるかが、会社の成長につながってくると思っています。

  もうひとつは「フットワークの軽さ」です。起業して会社を育てていくためにも、いろいろな方と会ったり、場所に出向いたりします。

  私も派遣で働きながら起業準備をしていたので、空き時間にコミュニケーションしたり、人に会いに行ったりしていました。

  そこから得た出会いや情報が、自分が進む道を切り開いてくれたり、新しい視点をもらえることもあるので、フットワークが軽いのは大事ですよね。

―最後に、これから社会に出る学生の皆さんにメッセージをお願いできますか?

  学生時代はあっという間です。私は英文科に在学中、海外に留学していればよかったと思っています。時間は有限です。学生時代は今しかないので、ちゃんと今の自分と向き合ってほしいです。
  たくさんの経験をし、自分の可能性を広げてください。

  有限の “時間” を自分のために使ってアドバイスをしてくれたり、支えてくれる家族、先生、友達に感謝できる人になってほしいと思います。そして、皆さんが目指す道でがんばってください!

<ディライテッド株式会社>
〒150-0032 東京都渋谷区鶯谷町17-10-504
JR渋谷駅から徒歩約6分

[取材・執筆・構成]
yukiko(ユキコ/色彩総合プロデュース「スタイル プロモーション」代表)
ライター兼ファッションスタイリスト。株式会社永谷園を経てファッションスタイリストに転身した異色のキャリアをもつ。伝統文化好きが高じて、日本人唯一の「焼酎スタイリスト」として活動。日本のお酒「國酒」を“流行×オシャレ”に情報発信。焼酎ブロガー、焼酎インスタグラマー。最近「焼酎Twitter」も始めたが、何をつぶやいていいのか思案中。

[編集・インタビュー写真撮影]
真田明日美
『Career Groove』編集長兼ライター、かつ歴史好きのゲーマー。真田幸村の直系ながら徳川家大好きの藤堂高虎ファン。歴史系雑誌書籍の編集者を経て現職。今年こそ海外旅行!を目指して貯金をするも、昨年末にインフルエンザで長く休んでしまった結果、お金が貯まるより先に有給休暇が底をつきそうなことにそわそわしている。※面識のない方からのFacebook友人申請はお断りしております。ご了承ください。

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