自分の“興味”の延長線に“政治“がある。だから、若者と政治をつなげたい

- 特定非営利活動法人YouthCreate
- 代表:原田 謙介(はらだ けんすけ)さん
1986年生まれ、岡山県出身。2012年 東京大学法学部卒業。2008年「20代の投票率向上」を目指し学生団体「ivote(アイヴォート)」を結成。「政治と若者をつなぐ」をコンセプトに2012年11月YouthCreateを設立。2013年1月NPO法人化。(本部最寄り:中野駅)。 地方議員と若者の交流会「VotersBar」を全国展開し、2016年7月までに28回実施。2014年東京都知事選挙・衆議院選挙、2016年参議院選挙では有権者がツイッターを通じて候補者に質問する「ASK TOKYO 2014」「ASK NIPPON 2014」「ASK NIPPON 2016」を実施。2014年、2015年に学生がまちづくりプランを発表する中野区学生議会を主催。2015年6月、「選挙権年齢引き下げ」に関し特別委員会にて参考人として意見陳述を行う。 文科省・総務省配布の「政治や選挙等に関する高校生向け副教材」を執筆し、この1年間で全国約40校の中高大で出前授業を実施するほか、岡山大学講師として登壇するなど、精力的に活動を続けている。
政治は難しくはない。若者と政治をつなぐ、原田謙介氏の活動

―現在の仕事内容を教えてください。
一言で表すなら「若者と政治をつなぐ場づくり」ですね。若い世代の投票率をあげるためにこだわっているところとしては、若者だけに向けてアプローチをしているのではないということ。
政治や社会や教育のしくみも変わっていかないといけないので、政治や教育に携わる方々と若者をどのようにつなげて興味を持ってもらうかを考えています。
―原田さん企画のイベントを通じて、政治家の皆さんは若者の声に対してどのような反応示されていますか?
そうですね、政治家も若者と会う機会は少ないので、貴重な機会だと思ってくださっています。
たとえば、イベントに参加する若者から「参議院って何?」とか「投票ってどうやってするの?」と質問を受けたりします。私も今まで政治に関心のなかった人たちからもらえる率直な意見や反応を、すごく大事しています。彼らから話を聞いて感じるのは、今まで政治に対して“ポジティブな意識”がなかっただけ。
だから実際に政治家と会って話をすると「あの政治家は親しみやすくておもしろい」とか「政治に興味が湧いた」とポジティブな考えをもってくれます。その新鮮な声を政治家にフィードバックして伝えているんです。
―原田さんは、若者と政治家の潤滑油のような役割をされているんですね。
つなぐ対象が“若者と政治家”の場合もありますが、“若者同士”をつなぐことも理想としています。選挙や政治でわからないことを若者同士で気軽に聞ける場づくりって大事ですから。

―政治に関心のない若者に、イベントに来てもらえるような工夫はされているのですか?
そうですね。工夫というか、なるべく自分が“自然体”でいるようにしています。「政治について一緒に学びましょう!」と気合を入れて呼びかけるのではなく、自分の趣味であるサッカーの話をしたり。共通の話題によって、互いの信頼関係をつくることをまずは大事にしています。
海外だと、スポーツは政治と絡んでいることも多いんです。リオデジャネイロオリンピックの会場建設が間に合わないとか、治安問題が懸念されて出場しない選手がいるとかニュースになっていましたが、こういう話題も“政治”です。
私たちが興味を持っている事柄の延長線上に、ちゃんと政治のネタってあるんですよね。
―そういう視点でお話を聞くと、たしかに政治が身近に感じますね。では、若者と政治をつなげている原田さんが、現在の仕事のやりがいをあげるとしたら何でしょうか?
1つ目は、政治は“何にでもつなげられる”ことです。先ほどもお話したように、スポーツや教育などみんなが興味のあることの延長線には“政治”が必ず絡んでいるので「スポーツと政治」「教育と政治」のようにジャンル問わずコラボレーションできるのがやりがいです。
2つ目は、日本には自分たちのような「若者と政治をつなぐ」ことを法人として職業でやっている団体があまり存在していないことですね。海外ではすでに行われているのですが、日本では何でも自分たちがモデルになるので、新たな一歩をつくれている実感があります。
3つ目は、企業とコラボレーションできることです。「若者と政治をつなげる」というコンセプトで今後の日本を考えた時、インターネットと連動させることは必要不可欠だと思っていました。
そこで実施したのが2014年にYahoo!JAPANと連動したネット選挙運動の解禁です。当時から政治家もツィッターなどを使って情報発信していました。
でもそれは一方的な発信なので「有権者が政治家に質問ができる企画をやりましょう」とYahoo!JAPANに提案して実施したのが「ASKキャンペーン」です。
2年前の東京都知事選挙で自分たちがやり始めたことが、今は同様のネットを介した双方向性の企画はほかの方も導入しています。誰よりも先に行った実感があるのは嬉しいですね。
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政治ってなんだろう? 政治に馴染みのない人に“入口”をつくりたい

―原田さんが大学時代に「20代の投票率向上」を掲げて、学生団体「ivote(アイヴォート)」を結成されていたきっかけを教えてください。
行政や政治など、世の中のしくみに関わりたくて国会議員事務所でインターンをしたのがきっかけですね。“政治”って何だろうと思って、現場を知りたかったんです。
実際に働いてみたら「いろいろな地域・分野から、いろいろな想いを持った人たちが集まる場」だと気づきました。
でも、そこに集まる人たちは50~70代の人たちばかりで、その下の世代がほとんどいなかったんです。政治って日本全体、国民全体の話なのに一定の世代しかいなくて変だな、と(笑)。
そこには「会えないしくみがあるのではないか」と感じ取りました。だったら、自分と同じ大学生に向けて「会えるしくみ」をつくろうと考えたんです。
政治のことを知らない同世代に向けて、わかりやすい“入口”をつくりたい。政治家と若者は世代も環境も異なるので、互いの考えにギャップがあります。だからこそお互いの距離を縮めるために自分がつなぎ役になろうと。
―その後、NPO法人を立ち上げ現在に至っていますが、今までの仕事で大変だったことはありますか?
継続が難しいですね。選挙期間中は教育機関や企業など様々な方とお会いして、忙しく動いていますが、選挙のない時にどのように世の中にアプローチしていくかを考えています。
私たちの仕事は1回きりだったり、一定期間に特化しているので“点”となっている事柄を“線”にして、いかに次回以降に発展させていくかが大切なんです。
そのためにも、きちんと持続させるには2パターンの仕事があると思っています。企画を自らが立ててイベントを行ったり情報発信をする“能動的な仕事”と、今回の取材のように依頼をいただいて行う“受動的な仕事”。どちらも大事なので、タイミングを見計らいつつ両方のバランスを保って仕事をしています。
★「YouthCreate」を支援する!★政治は、学ぶものではなく“関わる”もの

―若い世代の投票率を上げたり、政治への関心を持ってもらうために意識していることはありますか?
ポスターやCMでも「選挙に行こう!」とうたっていますが、このフレーズをPRするだけでは意味がないと思っています。フレーズを何度も繰り返し発信したって、若い世代は「そうだ、選挙に行こう!」とは乗ってこないんですよね(笑)。
JR東海の京都のCMは、映像や音楽で「京都に行くとこんなに楽しめる!楽しそう!」というイメージを持たせているから成功している例です。
―確かに、そうですね(笑)。
選挙の場合、そのタイミングになってから「選挙に行こう!」と投げかけても、政治になじみのない人たちは「行って何するの?」「票に誰の名前を書けばいいの?」と戸惑ってしまってイメージが湧かないんです。
だから、いかに選挙ではない時期に、どれだけ皆さんに理解してもらえるような環境をつくるかが大事なんです。選挙期間ではない時から、政治についてなじんでおく必要があります。
―政治になじむ環境を作っていらっしゃるのですね。
はい。そのため、イベントでは参加者と政治家が意見交換や交流が持てる内容にしています。一方的にどちらかが話すのではなく、また、講義のように堅苦しい雰囲気にもしません。政治は「学ぶものではなく、関わるもの」ですから。
―原田さんからお話を聞いていると、「政治ってそれほど難しいことではないのかも」と思えます(笑)。
そうなんです。勉強だとか学ばなきゃと考えるのではなく、自分の興味のあるネタから広げていけばいいんです。ですから、私たち「YouthCreate」がこれからも積極的に出会っていきたいのは“政治を知らない人たち”なんです。
★「YouthCreate」を支援する!★「参議院って何?」「政治って何?」……みんなが自然体で質問してくれる間柄でいたい

―アルバイトはされていましたか?
サッカー場や野球場で警備の登録バイトもやりましたし、4年前のロンドンオリンピックの時は日本テレビ本社で1か月間のオリンピック専門のアルバイトもしました。
学生時代にずっと続いていたのは、予備校の模試の採点のアルバイト。何日までに何枚採点すればいいという仕事だったので、マイペースにできたのが魅力でしたね。
もともとサッカーをやっていてフォワードの特性なのか、攻める時と様子を見る時のタイミングを計るのが好きなんです。現在の仕事も、企画を立てて“攻める時間”にするとか強弱をつけて仕事しています。
―国会議員事務所でインターンをされていたのはいつごろですか?
大学1、2年の時ですね。最近引退された、江田五月(※)さんの事務所にいました。同じ岡山県出身ということもあっていろいろと勉強させていただきました。
※江田五月[えだ さつき]氏/1977年に参議院に初当選。参議院議長、科学技術庁長官、法務大臣、環境大臣などを歴任する。2016年7月25日議員任期満了にともない、政界を引退。東大出身の元裁判官で、父は社会市民連合初代代表の江田三郎[えだ さぶろう]氏。―江田五月さんから影響を受けたことがあれば教えてください。
本当に勉強家で博識のある方でいらして、気さくな方です。政治家は色々な話を聞いたなかで、どのように結論を出すかを求められます。そのバランス感覚にも長けていらして、とにかく決断のスピードが速いんです。
お忙しいなか、美術館や博物館にも足を運ばれている姿を見てきて、時間管理の仕方、自ら情報を収集する行動力は勉強になりましたね。
―就職活動はされていましたか?
もともと就職活動をする気はなかったんですが、体験はしておきたいと思って3社だけ受けました。ただ、ちょうど就職活動時期に東日本大震災が起こってしまって……。企業側も動きが止まって、それが終了のタイミングでした。
実際に就職活動を体験してみて、とても贅沢な場だと思いましたね。説明会では普段会えない方から様々な話を聞けます。学生にとっては、視野も広がって自分の選択肢も広がる場です。
―そのような経験を経て、現在に至っているわけですが、仕事をするうえで大事にしていることはありますか?
はい、3つあります。1つ目は“人”です。 私の仕事の場合、同じ人とずっと一緒に仕事をすることはなくて、講演だったりイベントだったり1回きりの出会いが多いんです。だから、誰と仕事をするかは大事にしています。
2つ目は“守りと攻めのバランス”です。サッカーと重なりますが、仕事もそのバランスやタイミングが大事なので攻め時を逃さないようにしています。
3つ目は“新しいものをつくる”ということです。YouthCreateは、政治に関わる新しい入口を作りたいと思って設立しました。入口を作って、モデルとなるものを形成するのが好きです。その後の、環境を整えていくことは少し苦手なので(笑)、得意なメンバーに任せたり、企業や組織に託しています。
今後も自分のポジションとして、政治になじみのない皆さんが「参議院って何?」「政治って何?」と質問しやすい間柄でいたいですね。
★「YouthCreate」を応援する!★これからは、若者と政治をつなぐ“担い手”を増やしていきたい

―今後、原田さんが取り組んでいきたいことは何ですか?
現在は学校教育のなかに、どれだけ政治に絡んだ授業展開ができるかを考えています。たとえば社会や公民の授業でわかりやすく、身近に思ってもらえるような内容にしたり。家庭科だって、政治とつながっているんですよ。
スーパーでどこの産地の野菜がどれくらいの価格で売られているとか、流通がどうなっているとか。「政治は私たちの日常にある」ということを、学校教育で自然な感覚で身につけてもらえる方法を考えていきたいんです。
そして、「若者と政治をつなぐ」という私たちのコンセプトを理解し、かたちにしてくれる“担い手”を増やしていきたいと考えています。日本の政治だけではなくて、自分たちが住んでいる市町村の政治にも身近に感じてもらいたいんです。
―“担い手”というと、どのような方が該当するのでしょうか?
主に学校の先生、親御さん、地域イベントの関係者の皆さんですね。普段から「若者と政治をつなぐ」という視点を持ってもらって、その方々に私たちが培ってきたノウハウやプログラムを提供していきたいんです。
そうすれば、若い世代も政治は難しいものではなくて、もっと自分たちにとって身近なものだと実感できますから。
―YouthCreateではインターンを受け付けていますか?もし条件もありましたら教えてください。
政治をわかったような気になっている人は、私たちとしてはあまり面白みを感じないので、政治と自分のモヤモヤ感を突き詰められる人がいいですね。
いろいろなことを疑問視できて、正しいものの見え方ができる人。そういう人と一緒に活動していきたいです。
―では、この記事を見てくださっている若い世代にメッセージをお願いします。
“政治”を知る入口って、難しい専門書や新聞の一面を毎日読まなければいけない……というスタートである必要はないんです。皆さんがサッカーや音楽が好きだったら、それがどのように政治とつながっているのか関心を持つことから始めてほしい。
今ならインターネットで調べることもできます。メディアに出ていない情報だったら、専門家のブログやツイッタ―をチェックしてみてもいですし、「国会会議事録検索システム」を活用するのもおすすめです。
―「国会会議事録検索システム」ですか? どのように活用すればいいのでしょうか。
これがけっこう興味深くて、「カラオケ」で検索すると過去5年間で約40件、「サッカー」だと約270件の議事録が出てくるんです(笑)。(2016年7月現在)私たちの気づいていないところで、国会では私たちの日常に関する様々なことを話し合っているのがわかりますよ。
政治は、私たちの身近にある事柄なんです。日常に散らばっています。自分の趣味や特技、興味のあるところから政治について覗いてみるといいと思います。
私も皆さんが「政治って何?」「選挙って何?」と質問しやすい環境をつくったりイベントを開催していきたいと思っていますので、ぜひ目を向けてみてください!

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[取材・執筆・構成]yukiko(ユキコ/色彩総合プロデュース「スタイル プロモーション」代表) [撮影(インタビュー写真)・編集] 真田明日美