バイト先からクビを言い渡されたら? 不当解雇時の対処法も紹介
バイト先から突然 “クビ” を宣告されてしまったら、どうしますか?
「次のバイトを探せばいいだけのこと」と開き直るにせよ、「もっとマジメに働いておけばよかった……」と膝から崩れ落ちるにせよ、その “理由” についてもう少し考えてみてください。特に注意が必要なのは、何も理由が思いつかない場合です。
●妊娠・出産をバイト先に伝えたら解雇された
●職場でケガをしたら「明日からもう来なくてよい」と言い渡された
このようなケースでは「労働基準法」をはじめとする法律があなたを助けてくれることもあります。
コラムではクビになった時の給料事情についてもレクチャー。自分の権利を守るためにも、ぜひ確認してみてくださいね。
※なお、これから展開する説明は公開当時に施行されている法律に準じています。
参考:e-Gov「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(男女雇用機会均等法)」9条
参考:e-Gov「労働基準法」19条・65条
バイトの “クビ” って、どんな解雇の種類に該当するの?
解雇(クビ)には法律上、大きく分けて3つの種類があります。それぞれバイト現場における過去の事例と照らし合わせ、確認していきましょう。
①普通解雇:整理、懲戒解雇 “以外” の解雇
→労働契約の継続が困難な事情がある場合に限られる
②整理解雇:会社の経営悪化により、人員整理を行うための解雇
③懲戒解雇:従業員が極めて悪質な規律違反や非行を行った際に、懲戒処分として行うための解雇
参考:厚生労働省東京労働局「労働基準法<解雇編>」
▼【バイトをクビになる理由①】仕事ができない⇒普通解雇に該当しないケースも▼
重大な非違行為があったと客観的に認められる際に行われる “懲戒解雇” 、会社の経営悪化のため人員整理を行う “整理解雇” 。これらの2つにあてはまらない場合を「普通解雇」といいます。
では “仕事ができない” という理由でクビになった場合は「普通解雇」に該当するのでしょうか?
企業が従業員を “能力不足” と判断してもすぐクビにできるわけではないので、答えは「必ずしも該当するわけではない」といえるでしょう。企業側も現場指導などを行い、従業員が能力を伸ばすための処置を十分に行う必要があります。
参考:厚生労働省「確かめよう労働条件」裁判例(3)セガ・エンタープライゼス事件
→「自分に合っていなかった」と考え、他のバイトを探そう
どれほどがんばっても満足に仕事ができず、バイト先から「無能だ」と判断されてしまったら落ち込みますよね。
そんな時は「このバイト先は自分の性格や能力に合っていなかった」と考えるようにしましょう。同時に「なぜ合わなかったのか」を考えることも忘れずに。理由が分かれば、次のバイト探しで同じような環境を選ぶ可能性も少なくなります。
▼【バイトをクビになる理由②】出勤できない⇒普通解雇▼
何らかの事態によって「労働契約の継続が難しい」とバイト先から判断されると、普通解雇の対象となる場合があります。
例えば重病や怪我によって長期間回復が見込めず、復帰の見通しが立たなくなってしまった場合。ただ、病気になったからといってすぐ解雇されるわけではありません。所定の休職期間を経たのち、勤務できる状態ではないと判断された場合に解雇となるケースが一般的です。
参考:厚生労働省「確かめよう労働条件」裁判例(2)東京電力事件
▼【バイトをクビになる理由③】天災や経営不振など⇒整理解雇▼
バイト先が倒産寸前や災害で雇用関係を維持できない場合など、従業員数を減らす必要性がある時を「整理解雇」と呼びます。
整理解雇にいたるためには、バイト先が以下の4点をクリアする必要があります。
1.会社存続のため、スタッフ解雇に踏み切る“やむを得ない事情”があるか(人員削減の必要性)
2.解雇しないで済む経営努力を行ったか(解雇回避の努力)
3.解雇するスタッフを選ぶ方法に合理性があるか(人選の合理性)
4.スタッフに対する説明を十分に行い、バイト先とスタッフ同士が話し合って整理解雇に同意するまでの手順をきちんと踏んでいるか(解雇手続きの妥当性)
バイト先は、これらを満たして初めて整理解雇に踏み切れます。したがって、これらを満たしていないにもかかわらず “クビ” にされた場合は異議を申し立てることができます。
参考:厚生労働省「労働契約の終了に関するルール」
▼【バイトをクビになる理由④】極めて悪質な犯罪行為やハラスメント⇒懲戒解雇▼
従業員が極めて悪質な規律違反や非行を行った際に、懲戒処分として行われるのが「懲戒解雇」です。
例えばバイト先の高価な金品を盗み、注意されても繰り返す場合といった悪質な行為をした場合、懲戒解雇される可能性があります。また懲戒解雇以前の問題として、バイト先の金品を盗む行為は“窃盗罪”や“業務上横領罪”に該当する場合があり、警察に逮捕される犯罪ですので絶対に止めましょう。
他には、バイト先の同僚に対して悪質なハラスメントを行い続け、注意を受けてもなお続けた場合なども懲戒解雇となりえます。解雇にならないとしても、いじめやハラスメントになりかねないコミュニケーションは取らないようにしましょう。
参考:e-Gov「刑法」
バイト先から「クビ」と言われた時に知っておきたい対処法
思い当たる理由もなく突然バイト先から “クビ” と言われてしまった場合、不当解雇に該当しないかどうか確認しましょう。一方的な理由でクビを宣告された場合は法律に照らし合わせ、正当な要求を行います。
それでは、不当解雇にあたる事例を詳しく見ていきましょう。
▼妊娠出産や結婚を機に解雇⇒男女雇用機会均等法を確認しよう▼
妊娠や出産を機にクビを宣告された時は、男女雇用機会均等法第9条や厚生労働省が発表している文書を参照しましょう。不当解雇に相当しそうな場合は、その法律をバイト先に提示し、話し合いの場を持ちます。
出典:厚生労働省「妊娠・出産などに関するハラスメント防止措置の内容について」
男女雇用機会均等法でも、
第九条 事業主は、女性労働者が婚姻し、妊娠し、又は出産したことを退職理由として予定する定めをしてはならない。
として、妊娠・出産をクビの理由にしてはいけないと決めています。
出典:e-Gov「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(男女雇用機会均等法)」
▼業務上の怪我や病気でクビになったら⇒労働基準法を確認しよう▼
労働災害によるケガや病気での休業は、労働基準法第19条にて
使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後三十日間並びに産前産後の女声が第六十五条の規定によつて休業する期間及びその後三十日間は、解雇してはならない。
と認められています。仕事によるケガや病気でバイトに行けなくなってから30日に満たない状態でのクビは不当解雇にあたる可能性があります。
出典:e-Gov「労働基準法」
▼長期バイト、かつ一方的な理由なら「解雇予定手当」の請求が可能▼
長期的に働く予定だったのに、バイト先から一方的な理由で “クビ” と言われた場合、「解雇予告手当」を支払ってもらえます。労働基準法20条1項では
三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない
と定められています。企業側が従業員を解雇するには、少なくとも “30日前” には労働者に解雇を予告通知する必要があります。このルールを守っていなかった場合、「一方的な解雇」として解雇予告手当を支払ってもらえるのです。
ただし、定められた期間のみ働く場合は解雇予告の適用が除外されるケースもあります。詳細は、厚生労働省が発行している「リーフレットシリーズ」をご覧ください。
参考:厚生労働省「リーフレットシリーズ労基法20条」
理由のない解雇をされた場合は、バイト先に「『労働基準法』をはじめとする法律を守ってください』と伝えましょう。
・バイト先が話を聞いてくれない
・自分では不当解雇なのか区別がつかない
・誰にも相談できず、泣き寝入りするしかない
・「労働基準法」に関する細かい決まりが分からない
と言った場合は、最寄りの労働基準監督署に相談してください。まずは電話で相談したいことを伝えましょう。
その際には、
・解雇された日付
・勤務を開始した日
・解雇された理由
・(あれば)雇用契約書 など
を事前に準備しておくと話がスムーズに進むでしょう。最寄りの労働基準監督署を調べる際は下記を参照してください。
バイトをクビになっても給与の請求は可能
クビになっても確実に給料を受け取る方法があります。その事例と受け取り方を詳しく見ていきましょう。
▼バイトをクビになっても給料は支払われる▼
「明日からバイトに来なくてもいい」とバイト先からクビ宣告をされた場合でも、一般的に働いたぶんの給料はもらえます。もし、バイト先から損害賠償請求を受けているような場合であっても、給料の支払いを請求することが出来るのです。
労働基準法24条1項では、
賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない
として、全額払いの原則を定めています。法律で認められている場合や労使協定があるなどの例外を除き、バイト先が賃金から損害賠償分を勝手に天引きすることは許されません。「損害賠償分と給料を相殺したから支払わない」とバイト先が言ってきたとしても、あなたが相殺に同意しない限り、バイト先は給料を支払わなければならないのです。
参考:最高裁判所「判例情報」日本勧業経済会事件 最大判昭36.5.31 民集15-5-1482
▼クビになった理由が “自業自得” なら損害賠償になることも▼
バイトをクビになっても給与は支払われます。しかし、自分の行いでバイト先に多大な迷惑をかけてしまった場合、バイト先から給料額をはるかに上回る損害賠償の請求をされる可能性があります。
例えば、アルバイトスタッフがSNSに不用意な写真をアップロードしたことで店が閉店に追い込まれた事件なども。「単なるバイトだし、責任を負うことはないから大丈夫」と考えるのはご法度。自分の行動のせいで、とんでもない結果になるかもしれない……と一度よく考えてから行動しましょう。
■事例①:そば屋が破産手続き決定を受ける
そば屋でバイトしていた男子大学生が起こした事例です。
アルバイトの学生が店の食器洗浄機に下半身を入れている写真が、Twitterに出回りました。「不衛生である」などと批判を受けた結果、蕎麦屋は閉店を余儀なくされることに。間もなくして、破産手続き開始の決定を受けました。
そして当時の破産管財人が、アルバイトの学生に対して「損害賠償請求を検討している」と発表する事態になったのです。
参考:東京新聞朝刊 2013/10/19
■事例②:ステーキ店が閉店した事例
ステーキ屋のバイト店員が起こした事例です。
アルバイトの店員が冷凍庫へ入っている写真が、Twitterに投稿されました。運営会社は臨時取締役会を開き、事件が起こった店の閉店を決定。写真投稿に関わった2人のアルバイトを懲戒解雇しました。
同時に運営会社は、写真を投稿したバイト店員に対して「損害賠償請求を検討している」と発表しています。
参考:産経新聞朝刊(東京) 2013/08/13
参考:産経ニュース「ブロンコビリーがバイト撮影問題を起こした足立梅島店を閉店 バイト店員に損害賠償請求も」
「軽い気持ちでやったのに……」は言い訳になりません。店や他のスタッフだけでなく、将来の自分にも多大な損害を及ぼす行為は絶対にしないようにしましょう。
さいごに
さまざまな事情でバイトをクビになってしまった時は、次の2点をまず行いましょう。
・クビになってしまった理由は、①自分、②バイト先のどちらに責任があるのか見極める
・バイト先に責任があるなら不当解雇に該当しないか調べる
その上で、
・不当なクビであった時はバイト先と話し合いの場を持つ
・必要であれば、労働基準監督署を頼る
・突然のクビでも、働いた分のバイト代は請求できる
を念頭に置きながら、事態に対処していってくださいね!
とはいえ、まずはこのような事態をできるだけ避けるためにも、バイト先の先輩や同僚と信頼関係をしっかりと築くことが肝心。下記の記事ではバイト先の先輩と仲良くなれる方法をご紹介しています。ぜひご覧くださいね。