【図解】バイト残業代が支払われる条件と計算方法、未払い対策も解説
バイトの立場は正社員より責任が少なさそう、というイメージを持つ人も多いのではないでしょうか。なかには「アルバイトは絶対に定時で帰れる!」と認識している人も。
実は法律上の要件をクリアしていれば、アルバイトにも残業をさせることが可能です。特に繁忙期であればバイトスタッフの手が必要とされることもあるでしょう。そこで気になるのは “残業代” 。どのような条件でいくら支給されるのか、法律に照らし合わせながら説明していきます。また残業代が支払われることなく働かされた場合の対処法もレクチャーしますよ!
【目次】
1. バイトでも残業が求められるケースとは
2. 【図解】残業代の計算方法
3. バイト残業代の未払いが発覚した際の対処法
4. 労働時間にカウントされる作業
5. さいごに
※なお、これから展開する説明は2019年4月に施行される労働基準法に準じています。
バイトでも残業が求められるケースとは
それでは早速、バイトが残業する可能性をチェックしていきましょう。
▼法定時間 “外” でないと割増の残業代はつかない▼
そもそも、法定時間 “外” と “内” の2種が存在する残業。法律では労働時間の上限を、
一日8時間 / 一週間で40時間
と定めています。この上限を「法定時間」といい、この時間を超えて働いた分は「時間外労働」と呼ばれています。
労働時間の上限については、こちらの記事でさらに詳しく紹介しています。
バイトの労働時間は週40時間・日8時間が上限
法定時間外の残業が発生した場合、企業は正社員/バイトスタッフを問わず “割増賃金(いわゆる残業代)” を支払わなければなりません。これに対して、法定時間内であれば残業代はつきません。
法定時間外の残業の例を見てみましょう。
●シフト=9:00~18:00(8時間労働・休憩1時間)の場合
19:00まで残業すると9時間労働
→18:00~19:00は法定時間 “外” の残業扱いとなり、1時間分の割増賃金が支払われます
次に法定時間内の残業の例です。
●シフト=9:00~17:00(7時間労働・休憩1時間)の場合
18:00まで残業すると8時間労働
→17:00~18:00は法定 “内” の残業時間となり、法律上残業代はつきません
したがってここから先は、残業代が発生する法定時間 “外” の残業について説明していきます。
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バイトの休憩時間も給料発生する?労働基準法を解説
▼バイトに残業を命じるための条件を確認しておこう▼
雇用主がバイトスタッフに残業を命じるには条件があります。
①36協定(※)を締結し、届け出ている
(※)労働基準法36条で定められている “労使協定” を指します。残業を命じるには、この「36協定」を締結したうえで労働基準監督署に届け出る必要があります。
②就業規則や労働協約で、残業を命じる可能性があることを明確に規定している
③業務上の必要性があり、バイトスタッフが残業を断る正当な理由がない
労働契約書や労働条件通知書、就業規則などは「難しそうだから読みたくない」と遠ざけがちですが、残業の有無が記載されているどうかかは重要な項目。しっかり確認しましょう。
ちなみに労働基準法によって残業時間の上限が決められており、2019年4月1日(※)から原則
一ヵ月45時間まで / 一年360時間まで
といった規制が導入されました。
(※)中小企業は2020年4月1日から適用されます。
参考:厚生労働省「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」
参考:e-Gov「労働基準法36条4項」
法律上、バイトでも残業代がもらえる!手当の計算方法
冒頭で述べたように、法定時間 “外” の残業をすれば、バイトでも残業代が支払われます。続いては割増の残業代が発生する条件と計算方法を確認していきましょう。
▼【バイトの残業代が発生する条件】8時間/日 or 40時間/週を超えたら▼
労働基準法においては、一日8時間、あるいは週に40時間を超える法定時間を超えて勤務した分が「残業」扱いになると定義されています。
そのうえでいくら支給されるのか、具体的な計算方法をこれから提示しますね。
参考:厚生労働省「アルバイトをする前に知っておきたいポイント」
▼【計算してみよう!】バイト残業代の計算方法▼
8時間/日、40時間/週を超えた労働時間分の残業代は、通常賃金の25%以上割り増しで計算されます。また22:00~翌5:00に勤務した場合は、上記の割り増し賃金に加えて25%以上の「深夜手当」も併せて支払われます。しっかり覚えておきましょう。
残業と聞くと長く拘束され苦しいイメージを持つ人もいるかもしれませんが、「稼ぐチャンス」と考えればよい機会ともいえるでしょう。ここで、時給1,000円のファミレスでホールスタッフとして働いているAさんを例に割り増しの残業代を計算してみましょう。
●法定時間外労働の場合
シフト=9:00~18:00(8時間労働・休憩1時間)
→混雑していたので残業を求められ、19:00まで働いた
この場合、9時間労働となるので法定 “外” となり、18:00~19:00は残業扱いになります。残業代は法律で25%以上と法律でされているので、この1時間の時給は
時給1,000円+残業割り増し分(1,000円×0.25)円=1,250円
となります。
●深夜労働の場合
シフト=13:00~22:00(8時間労働・休憩1時間)
→混雑していたので残業を求められ、23:00まで働いた
この場合、9時間労働となるので法定 “外” となり、22:00~23:00は残業扱いになります。さらにこの1時間は “深夜労働” とみなされるため、残業分の時給は
時給1,000円+残業割り増し分(1,000円×0.25)円+深夜割り増し分(1,000円×0.25)円=1,500円
という計算に。
同じバイト先で勤務期間が長くなると給与明細を見ない人もいるかと思いますが、残業が生じた月は注意深く給与明細をチェックし、残業代が正しく支払われているか確認しておきましょう。
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深夜シフトのコンビニバイトって楽なの?
参考:厚生労働省「割増賃金の基礎となる賃金とは?」
バイト残業代の未払いが発覚した際の対処法
できればこんな事態に陥りたくありませんが、残業代の未払いが発覚した場合はどのように対処すればよいのでしょうか。勘違いなどですぐに解決すればよいですが、場合によっては相談機関の窓口に申し出ることも検討しましょう。
▼【バイトの残業代が出なかったら①】上司や会社の相談窓口に申し出る▼
まずは順序として、賃金を管理しているバイト先の上司や現場の責任者に確認を取りましょう。勘違いや計算ミスの場合、適切に対処してもらえるはずです。
残業代が支払われていないことに気づいた時、「上司や店長に伝えていいのだろうか……」とモヤモヤしていては何も解決しません。給与に関するトピックはわだかまりが残りやすいため、早めの解決を目指したいものです。
なお、直属の上司にどうしても言いづらい場合や、言ってもはぐらかされてしまった際には、本社の人事部や相談窓口に連絡する手段もあります。
▼【バイトの残業代が出なかったら②】解決しない場合は公的な相談窓口へ▼
バイトで残業した分の時給が支払われない、もしくは少ないことを上司や現場の責任者に伝えたのに取り合ってもらえない、会社の人事部や相談窓口に連絡しても解決しない……という場合には、厚生労働省が設置している以下の機関を活用するのもおすすめです。
労働上のさまざまなトラブルについて、電話と面談で無料相談を受け付けている「総合労働相談コーナー」。都道府県の労働局や労働基準監督署内などに設置されています。
労働条件に関する疑問や相談を、電話で受け付けています。平日は17:00~22:00、土日は9:00~21:00と対応時間が長く、無料で相談できるため、バイト前後でも電話をかけやすいですね。
労働基準法に違反するような働き方が疑われる場合に、メールで相談できる窓口です。テキストで伝えるため、メールの往復回数が少なくて済むように “情報提供のポイント” を事前に確認して状況を整理してくださいね。
このほか、都道府県ごとに設置されている労働局や労働基準監督署、総合労働相談コーナーに相談する方法もあります。働いた分の賃金を得るのは、従業員として当然の権利。尻込みせずに立ち向かいましょう。
▼【バイトの残業代が出なかったら③】証拠を集めてから相談すべし▼
これまでに紹介した窓口のいずれかに相談するなら、残業代が正しく支払われていない事実を証明する必要があります。証拠のない自己申告では、あなたの勘違いを疑われてしまう可能性があります。
証拠として活用できるのは、いつ・どのくらい働いたか……がわかるもの。
・タイムカードのコピー
・シフト表
などが該当します。それらの証拠を給与明細と照らし合わせながら、残業代未払いの申告をするようにしましょう。
なお、これらの証拠がない場合でも諦めずに証拠を集めましょう。スマホアプリのGPSに移動履歴が記録されていたことで残業が認められることもあります。普段から、労働時間の記録を取っておくとよいでしょう。
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あれも残業なのか! 労働時間にカウントされる作業を知っておこう
ところで労働時間とひと口に言っても、具体的に何をしている時間が “労働” とみなされるのでしょう? 営業時間外の作業も立派な “労働” ですので、残業にカウントすることができるんですよ。
▼【バイトの労働時間にカウントできる作業①】営業時間外の準備や後片付け▼
バイト先に到着して、そのまますぐ働き始める人は少ないのではないでしょうか。働くために制服に着替え、勤務先のルールによっては店やオフィスの清掃から始める場合もありますよね。これらは、労働を始めるための準備時間というわけです。
どこからが労働時間になるかは、バイトスタッフが雇用者の「指揮命令下」に置かれているかどうか、という点が基準になります。制服の着用や後片付けの清掃は、雇用者から指示されて行うもの。よって準備時間も “労働” として計算されるべきなのです。
このような準備が終了してから/後片付けが終わる前にタイムカードを切っている場合は、上司や現場の責任者に労働時間について確認すべきでしょう。シフト外の作業であるなら、残業に含められる可能性があります。
参考:独立行政法人 労働政策研究・研修機構 雇用関係紛争判例集「労働時間の定義」
▼【バイトの労働時間にカウントできる作業②】ミーティングや研修▼
始業前の朝礼やミーティング、終業後に研修や反省会が開かれた場合も、上司や現場の責任者の指示で参加する場合は立派な労働時間。考え方としては、その作業や対応が「強制されているか/そうでないか」という点が、労働時間の判断基準になるわけです。
休憩時間にも注意が必要で、
・休憩中も電話がかかってきたら対応する
・お客さまが増えたらすぐにフロアに戻る(ホールスタッフなど)
といった規定がある場合、これも労働時間になります。休憩は本来、勤務から離れて自由にできる時間。上記のような指示のもとで与えられる休憩時間は「指揮命令下」とみなされることを覚えておきましょう。
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バイト先が労働基準法違反をしていないかチェック
参考:厚生労働省 労働基準法に関するQ&A「労働時間・休憩・休日関係」
さいごに
バイトスタッフであっても、法律上の要件が満たされている場合は残業をする必要があります。アルバイトも残業代を受け取る権利がありますので、万が一未払いが発覚した場合は、しかるべき窓口に相談し、早い解決を目指しましょう。
労働時間とひと口に言っても、制服に着替える準備や後片付け、営業時間外に行われる研修やミーティングまで含まれることは知らない人も多かったのではないでしょうか? 「労働時間には正当な賃金が支払われるべき」という点を念頭に置き、気持ちよく労働にあたりましょう。
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